お祭り前夜の6時間

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 わざわざ、便秘ごときで電話なんて、と思ったが、それなりの異変を感じていたからかもしれない。  結果、悪性の腫瘍が大腸にあるとわかった。  母親が精密検査を受けた後に、主治医から連絡がきたのだ。  便秘がちでお腹が張っていたのは、腫瘍が胃や腸の壁の内側を覆う腹膜に転移し、癌細胞がお腹の中に散らばって、腹水がたまっていたからだった。医者には、余命数か月と言われ、手の施しようがないと言われた。 「お母さんに、本当の事を言いますか?」  刑務所の取り調べ室のような、無機質な事務所で、俺はパイプ椅子に座り、自分より明らかに年下の医者から問われた。  なんでこんな年下の医者に指図されないといけないんだ!やり場のない怒りで俺の体は火を噴きそうだった。  母親に言うと動揺するかもしれない、それなら、正直に話さずともよいのではないか、無駄に正直に話しをしたところで、どうなるのか・・・。  俺は迷いながら、一人で決めた。兄弟も親戚もおらず、一人で決めざるを得なかった。  「癌という事は言いますが、余命わずかの話はしません。」  「わかりました。では、そのようにお伝えしましょう。」
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