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そうだ、俺はこの時に、正直に言うかどうか悩んだ。
医者は、癌だが取り除かず、延命治療の為、抗がん剤を打つ事を母親に話をした。
「達也、母さんが癌だって先生に言われたけど、癌ならその細胞を手術で取り除いたらいいんじゃないかい?今さら、胃だの腸だの取ってしまっても、母さんは何の未練もないよ。それで治るならそうしておくれよ。」
母親はそう俺に言った。
治るならそうしている!どれだけ俺が叫びだしたかったか!
ただ、治らないとも言えなかった。
だが、あの時、もし、治らないとわかったら、入院せずに自宅で過ごす事を望んでいたかもしれない。
俺の記憶では、このまま母親が亡くなっていく。だが、もし、ここで、余命の話をしたら何かが変わっていたのだろうか・・・。
思い出をみるだけで、俺の行動は変えられないのか!これじゃ単なる悲しい思い出を見せつけられるだけじゃないか!こんなお面を選ばない方がよかった!
「達也。」
俺は急に呼ばれて後ろを振り返った。
そこにはベッドで寝ていたはずの母親が満面の笑みで立っていた。
「か、かあさん!」
「達也、会いに来てくれたんだね。」
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