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【episode6-捕縛前夜】
魁人のことは、もう忘れよう。
自分を大切にしてくれる樹と愛を育んでいくんだ。
沙楽が、そう決心した矢先のことだった。
『俺、また捕まるかもしれない。』
魁人からのメッセージに、沙楽は、全身の力が抜けていくような感覚を覚えた。
パートナーと別れ、沙楽も距離を置こうとしたことで、魁人の生活は荒れていた。
会社を無断欠勤し実家の両親からの連絡を無視し続けていたのだ。
連絡の取れない魁人に業を煮やした会社の代表取締役が、実家を訪ねて来た。
そこで、両親に「捜索願を出す。」と言い出したのである。
『俺、怖いんだよ。捕まるのが怖くて仕方ないんだ。』
また、魁人と会えなくなってしまうーーー。
沙楽は、携帯電話の画面に映る文字を眺めて死んでしまいたくなっていた。
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