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誕生日前夜、母がビールを飲む理由
お母さんの習慣に気づいたのは16歳の誕生日前夜だった。自室で勉強中に新しくお茶を入れ直すために1階に降りたら、リビングでお母さんがひとり、缶ビールを飲んでいた。
普段はお酒なんて一滴も飲まず、お父さんに「最近飲み過ぎなんじゃない?」なんて注意をするくらい酒と縁遠い人なのに。
「珍しい、ビール飲んでるの?」
「……まあね」
「何か嫌なことでもあった?」
「やけ酒じゃあないわよ。たまあに飲みたくなるの」
「ふーん」
テキトーに話を切り上げてお茶をいれていたら、あれ? と思った。
去年の今ごろもこんな会話をした記憶がある。進路希望の紙に親のサインが必要で、もらいに行ったらお母さんがビールを飲んでいて……確か、提出締め切りが明日、私の誕生日である10月20日だって思っていたから間違いない。去年の今日だ。
その前飲んでいた時も、誕生日が近かった気がする。肌寒いのにどうして? と首をかしげた記憶がうっすら残っている。
(なんか理由があるのかな)
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