眠れない夜は

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「そういえば、昨日面白い夢見たの」  思い出したように言うのは里奈。突発的に話を始めるのはよくあるのか、母はそれで、と先を促す。 「チョコレートが世界から消えちゃう夢。悲しくて朝からちょっと泣いちゃった」 「それで朝、元気なかったの。お母さんもね、夢を見たの」 「へぇ、どんな」  ふたりは他愛のない話をしながら、夜のドライブを楽しんだ。最近あった出来事、昔の失敗談、でたらめな作り話……。話ができればなんでもよかった。  車はコンビニの駐車場で停まった。ふたりは車から降りると店内に入り、真っ先にドリンクコーナーへ行く。ふたりが立ち止まったのはソフトドリンクではなく、酒コーナー。様々な種類のビールやチューハイが並べられた酒コーナーは、普段ならあまり見ないが、こうして夜中に見ると輝いて見える。 「何がいい?」 「んーっとね、これ」  母に聞かれて里奈が手にしたのはカシオレの缶チューハイ。次にふたりは、グラタンやドリアを眺める。  里奈が高校生の頃に働いていたコンビニは夜の10時頃に品物が届いていたが、ここは違うのか、エビグラタンがひとつあるだけだった。母はエビグラタンを手に持つと、缶チューハイと一緒にレジに持っていく。眠そうな若い男性店員がレジ打ちをしている。  母は店員に「この時間眠くて大変でしょう」など言いながら、グラタンの温め時間を待っていた。  里奈はお菓子コーナーへ行き、カロリーが低い枝豆チップスを持ってレジへ行く。どうやら温めも終わったらしく、母は茶色のコンビニ袋を目線の高さまで持ってこちらに微笑む。 「先に車に行ってるよ」 「うん」  母が店から出ていき、自分もレジに行こうとしたところでパンコーナーが視界に入る。そこには里奈の大好きなくるみパンがあった。 (明日の朝食にしよう)  くるみパンを取った後、粉末ポタージュを見つけ、それらをレジに持っていく。会計が終わって車に戻ると、膝に温かいものを乗せられた。さっき買ったばかりのエビグラタンだ。 「なに買ったの?」 「ヒミツー」 「えー、ケチー」  そんな会話をしながら、車はコンビニを後にする。  少し遠回りをして、橋を通った。橋には両側に街灯があって、優しいオレンジ色の光が橋の上にある道路を照らしてくれる。里奈は子供の頃からこの光景が大好きだった。
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