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部屋でくつろいでいた彼の手が、すっと、私の腿の隙間に忍び込んでくる。
「もう、明日は市役所へ行くし、荷物だって運ばなきゃいけないのに。そんなことしてる場合じゃないでしょ」
「そうだけどさ。ほら、まだ独身のうちにさ」
「意味わかんない」
そう言いながら私は拒まない。
なんだかんだで、きっとそうしてくるだろうと予想していた。……期待していた。
明日は式を挙げるわけではなく、とりあえず良い日に籍を入れておく、というだけだ。
そしてこれを機に彼は、今住んでいるアパートを引き払ってくる。とはいえそれも、もうすでに引っ越しの準備は整えてきたというから、口ではたしなめてはみたものの、問題はないと言えばない。
私のルームウェアのボタンを外しにかかっている彼は、まるで不安など一抹も感じてなさそうだ。こちらは、いつも通りを装っているものの、少なからず心が落ち着かないというのに。彼の様子に、私は呆れつつも、どこか安心感を覚え、しばらく彼の指に身を任せることにする。
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