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「……」
本当に、口が上手い。
こちらの反論を否定せず受け止めて、さらに強い主張にして返してくる。そういうテクニックのひとつなんだと思っても、心は反応する。嬉しいと、感じさせられる。
「あと、たっぷり甘えさせてくれるところも、好きだよ?」
そう言いながら、私の胸に顔をうずめてくる。これじゃあ、反論などできようもない。
「……知っての通り、俺はこれまでそれなりにいろんなタイプの女の子と付き合ってきたけどさ。こうしていつでも甘えたいときに甘えさせてくれる、甘えられる相手は、きみじゃなきゃ、ダメなんだよ。特に、これからはさ」
ああ。
私を喜ばせようと思って言っていることだと、そうわかっていても。
わざと一度軽く冗談めかしてから、懐に潜り込んだ途端に真剣な眼でそんな言葉を放たれたら、悔しいけど、敵わない。
「……うん」
私は脳の芯を溶かされたような感覚に陥りながら、彼の頭をそっと両腕で包み込む。
これからもずっと、一緒にいたい。
すぐに自信は持てないし不安もゼロにはならないけれど、ズルいくらいに魅力的なこの人を、支え続けていきたい。人を愛することを、その素晴らしさを教えてくれた、この人を。
心の底から、そう思った。
この夜が明けて明日になっても、その先も、ずっと変わらない。
私は、彼の望む限り、これからもずっと側にいる。
彼が、私は名前も知らない誰かと籍を入れ、一緒に暮らす生活を始める、その後も。
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