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日奈子が玄関に行き、俺のいる部屋に武くんと一緒に入って来た。妻もお茶をいれて、とりあえず座った。
そして、武くんが話し始めた。
「夜分遅くに、申し訳ありません。でもどうしても今夜のうちにご挨拶したくて伺いました。わたしと日奈子さんはお見合いでしたので、プロポーズもありませんでしたし、ご両親に娘さんをくださいとお願いすることもなく仲人さんを通してご縁を結ぶことができました。最近、これで本当に良いのか?と思っていたんです。わたしが自分の口でご両親にお願いするべきだったのではないかという思いが、今日会社で、一週間休むための申し送りをしている時に、突然大きくなりまして伺いました」
俺は、というか妻も日奈子も驚いていた。
でも武くんの、その気持ちがとても嬉しかった。
なかなかできることではないと思ったんだ。
武くんは続けた。
「お父さん、お母さん、日奈子さんを必ず幸せにしますので、わたしに日奈子さんをください。宜しくお願いします」
頭を下げて言ってくれた。
俺も「わざわざありがとうございます。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」と言って頭を下げた。
妻も日奈子も同じだった。
武くんは「お疲れのところ夜分遅くに申し訳ありませんでした。明日はよろしくお願いします。それでは、失礼します」と言って帰って行った。
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