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日奈子が、武くんの見送りから部屋に戻って来た。
幸せそうな顔をしていた。
武くんは、本当に15分ほどで帰って行った。
疲れていたのは誰でもない武くんだったはずだ。
すると、日奈子が口を開いた。
「あの〜私もちょっと挨拶をさせて貰いたいと思っていたのでしてもいいかな」
武くんの挨拶でしみじみしていた俺は不意をつかれた格好で急なことにあたふたしてしまった。
「あ〜もういいから、いいから」
俺がそう言うと日奈子は「え?」というようなリアクションで「いいの?本当にいいの?」と言った。
俺は「近いんだから、顔をたまには、見せに来てくれよ。それだけでいいんだよ」と照れ隠しに言うのが精一杯だった。
泣いてしまいそうだった。
何としても男親としては娘に泣いた顔は見せられない。
「もう、明日早いから寝なさい」と言って急かした。
日奈子は「それじゃぁ…しないけど…。今日はありがとうございました。おやすみなさい。明日はよろしくお願いします」
そう言って日奈子が部屋を出ようとした時、俺は「武くん、いい人でよかったな。お父さんとお母さんは安心したよ」と言っていた。
日奈子はうなずいてニコッとした。
日奈子のいなくなった部屋で俺は今夜あったことがどんなに幸せな出来事だったのかを何度も思い出していた。
俺…明日は泣かないでいられるんだろうか…。
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