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2.当日
我ながら柄にもないことを、と思わずにはいられなかった。
でも今、全てをかけなくていつかけるのか。
あいつはあいつで、すべてを擲つくらいの覚悟でいる。
それを受け止めることすらできないようじゃ、俺は何のためにいるのかわからない。
行ける範囲にある貸衣装店を片っ端から当たり、なんとか借りることができたタキシードは、奇しくも俺の体格にぴったりだった。
それは運命でも何でもなく、ただ俺が平均的な体格というだけのことなのだが、それで少しでも様になるならありがたい。
正直なところ、ここまで──わざわざタキシードに身を包むことまで──する必要はなかったのかもしれない。
だがあいつのためにできることは、なんだってしてやりたかったのだ。
扉のそばに控えている式場スタッフに無言でうなずき、正面に向き直る。
さあ、勝負のときだ。
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