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俺が押した扉は、どこか大袈裟にも思えるくらいの音を立てて開いた。
その場の全員が何事かと背後を振り返る。
ところどころからはっと息をのむような雰囲気は感じられたが、意外にもざわめきが起こることはなかった。
かわりに、息が詰まりそうな静寂が空間全体を支配している。
全員が──本当に文字通りこの場にいる全員の意識が自分に向いているのが否応なくわかる。
当然だろう──結婚式の真っ最中に男が乱入してきたのだから。それも、タキシードに身を包んだ男が。
傍観者たちは漠然と「ドラマみたいだ」と思うかもしれない。
でもこれは決してドラマなんかじゃない。
だから「その結婚、ちょっと待った!」なんて、下手なセリフは要らない。
たった一言、呼ぶだけでいいのだ。たった六文字、発音するだけで。
「佐倉由香理」
チャペルに響いた俺の声に、ようやくゲストたちがざわめき出した。
その瞬間、バージンロードの先にいる由香理と目が合う。
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