2.当日

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 まるで全てがスローモーションだった。  熱にうかされたように一歩踏み出した由香理の腕を新郎が掴む。  が、その手に残ったのはグローブだけだった。由香理の華奢な腕は既に空を切っている。  そっと両腕を広げた中に、由香理が飛び込んできた。  それを受け止めた勢いのまま抱きかかえ、俺は無言で踵を返す。  背後ではざわめきが一層大きくなった。  が、俺は振り返らない。俺には振り返る義理も資格もない。  どんな理由があれ、由香理が彼らを裏切ったことは確かなのだ。  それに手を貸した──いや、むしろ企てたと言うべきか──俺も当然同罪だ。 「私、最低な花嫁だよね」  由香理がぼそりと言った。  きっとその顔には自嘲的な笑みを浮かべているに違いない。  だからあえて見当違いの返事をする。 「ま、俺よりはましだろうけどな」
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