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「ええと、初めまして。千秋、凛です」
ちあき、と、りん、の間を少し強調して言って、ぺこりと頭を下げる。
「初めまして、青木朔です。なんか変な勘違いしてすみません」
すみません、の「ん」まできちんと言い終わってから、青木くんも頭を下げてくれた。
挨拶が終わってから頭を下げるの、えらいなあ、と呑気なことを思った。
「いえ。こちらこそ、分かりにくくてすみません」
「いえ」
青木くん、いつも青木ですって名乗ってるからなんか不思議な感じがするけど、そうだよね、名前あるよね。
朔くんていうのかあ。きれいな声で、きれいな名前だ。
「千秋さん時間あります? ここで曲かけても大丈夫ですか?」
「ありますあります! わたしでよければ猫の手します!」
「ありがとうございます。先生、荷物とCD取りに行ってきます」
「おー」
ひらひら翻る先生の手のひらに見送られて、失礼します、と礼儀正しく青木くんが背中を向けた。
「先生、放送部の顧問してたんですね」
「そ。みんなしっかりしてるから、顧問の出番はあんまりないけど、一応」
「青木くんもしっかりしてそうですよね。礼儀正しいし、お辞儀きれいだし、放送すらすらだし」
というか。
「青木くんて、お名前、朔くんっていうんですねえ。放送で名乗るから、青木くんって名字は知ってましたけど」
「あ、やっぱり知ってるんだ?」
「放送聞いたことあるひとならみんな知ってますよー! 一年生なのにすごいって言ってます。いい声だーって」
「だって、青木」
「…………どーも」
扉の向こうの廊下から、むすりと小さく返事をよこされた。
わ、戻ってきてたの気づかなかったー! びっくりした!
聞かれて困ることは話してないからいいんだけど。青木くん、照れててもいい声だなあ。
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