青い時間はきみの中

7/14

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「い、い声……では……ないけど……」 「いい声だよー。穏やかーで優しそうでさ、マイナスイオンって感じで聞き取りやすくていいよね。放送楽しみにしてるんだ」 マイナスイオンをイメージしてそよそよと振った手を、うろたえた目線が追って、揺れて、苦笑いの形になった。 「あー、うん。ありがとう」 「だからわたし、話してみたかったの。無理に付き合ってるんじゃないよ」 言いたかったのはこれなんだけど、回り道をしてしまった。どうも、と控えめなお礼が降る。 「青くんは……、青くんでいい?」 「うん」 「青くんはいつ放送担当なの?」 「朝は水金、掃除は月、帰りは火木」 「わかった、今度から気をつけて聞くね」 よし、と頭にメモをする。このマイナスイオン、浴びないでか。いや浴びたい。 「凛は何部なの?」 「書道だよ。週一なのが気楽なんだ」 へえ、と言いながら、候補を絞ったらしい青くんが、CDの山からいくつか束を抜いた。 「まず第一候補として、ペールギュントの朝の気分がいいかなと思ってる。朝だから」 「ダジャレじゃん」 「だって朝の気分だよ。ぴったりでしょ。曲に朝って入ってたら分かりやすくない?」 「朝の気分って、たーらーららーらーらってやつ? わたしそれ、中学校で朝の音楽だったよ」 「そうなんだ。やっぱり被ってるか。朝にかけるなら朝って入ってる曲を、ってみんな思うよなー」 そんなことを言いながら、二分くらいずつ聞いていって、候補をなんとか三つに絞った。曲名には、頑なに「朝」がついている。 どれにしようねえ、と二人でうんうん唸る。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加