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「い、い声……では……ないけど……」
「いい声だよー。穏やかーで優しそうでさ、マイナスイオンって感じで聞き取りやすくていいよね。放送楽しみにしてるんだ」
マイナスイオンをイメージしてそよそよと振った手を、うろたえた目線が追って、揺れて、苦笑いの形になった。
「あー、うん。ありがとう」
「だからわたし、話してみたかったの。無理に付き合ってるんじゃないよ」
言いたかったのはこれなんだけど、回り道をしてしまった。どうも、と控えめなお礼が降る。
「青くんは……、青くんでいい?」
「うん」
「青くんはいつ放送担当なの?」
「朝は水金、掃除は月、帰りは火木」
「わかった、今度から気をつけて聞くね」
よし、と頭にメモをする。このマイナスイオン、浴びないでか。いや浴びたい。
「凛は何部なの?」
「書道だよ。週一なのが気楽なんだ」
へえ、と言いながら、候補を絞ったらしい青くんが、CDの山からいくつか束を抜いた。
「まず第一候補として、ペールギュントの朝の気分がいいかなと思ってる。朝だから」
「ダジャレじゃん」
「だって朝の気分だよ。ぴったりでしょ。曲に朝って入ってたら分かりやすくない?」
「朝の気分って、たーらーららーらーらってやつ? わたしそれ、中学校で朝の音楽だったよ」
「そうなんだ。やっぱり被ってるか。朝にかけるなら朝って入ってる曲を、ってみんな思うよなー」
そんなことを言いながら、二分くらいずつ聞いていって、候補をなんとか三つに絞った。曲名には、頑なに「朝」がついている。
どれにしようねえ、と二人でうんうん唸る。
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