地球人類の猶予

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地球人類の猶予

日進自動車社長の日野進歩(すすむ)は天色に尋ねた。 「先生、宣伝堂での用事は若返り薬の宣伝依頼ですか?」 「そうだな、行く前にお前と話しておくか」 「はい」 「立ち話もあれだ。座らせてくれ」 「あ、これは失礼しました」 「いや」 「社長室にご案内します」 「時間がもったいない」 「え?」 「社長専用車とかあるだろ」 「はい」 「宣伝堂へその車で行く。その中で話す」 「なるほど。それは時間ロスが無くて良いです」 「ああ」 秘書に社長専用車を手配させた日野進歩。その社長専用車に天色とカリーナは乗り込んだ。 「宣伝堂に依頼するのは若返り薬の事ではない」 「では、何を」 「宇宙創造社という会社をつくった」 日野社長に名刺を渡す天色。 「宇宙創造社ですか。夢のある名ですね」 「まあな」 「しかし、御名前が佐藤天色ですが」 「今の俺は佐藤天色として生きている」 「なるほど」 「宇宙創造社には地球の女神、桂里奈を筆頭に8名の女神がいるんだ」 「女神ですか。それは、まさに宇宙ですね」 「宇宙だな」 「その女神たちでエンターテイメント事業でも?」 「1人は走る女神だ」 「え?」 「100メートル走からマラソンまで、女性の中では、あらゆる走る競技で世界最速だ」 「……それ、先生の開発した薬でドーピングですか?」 「馬鹿な」 「あ、すみません」 「俺の科学的トレーニングと専用の食事、特別な睡眠や休息。そんなところだ」 「なるほど」 (いや、兄さん。加奈代にいつ、そんな科学的トレーニングとかやりました?)と思うカリーナ。 「女性の中では1番重たい物を持ち上げる力の女神、格闘技では女性の中では最強の技の女神、最高の漫画を描く漫画の女神がいる」 「それは凄いです。えっと、今ので5人ですね。残りの女神3人は?」 「残りの3人は家庭的な女神だ」 「家庭的な?」 「料理、掃除、ガーデニングだな」 「なるほど。内助の功的な女神ですか」 「そうだ」 「走り、力、技、漫画は分かりますが、地球の女神とは?」 「文字通り、地球を救う女神だ」 「地球を救う?」 「地球人類は文明を進めすぎた」 「え?」 「宇宙へも進出し、宇宙へゴミを撒き散らしている」 「スペースデブリですか」 「ああ。宇宙創造主と宇宙管理システムから警告がな」 「え?」 「この宇宙を創ったのは思念体だ。まあ、俺は宇宙創造主と呼んでいるが」 「あの」 「そして、その宇宙創造主が宇宙を管理するために構築したのが宇宙管理システムだ」 「えっと」 「信じられないか?」 「いえ、先生が言うなら信じます」 「そうか」 「はい」 「その宇宙管理システムがな、地球人類は宇宙にとって不要だと決めたらしい」 「え?」 「しかし、宇宙創造主も悪魔ではない。猶予は与えられた」 「その猶予とは」 「30年だ。30年のうちに、地球から機械の動力を使った乗り物や……まあ、機械を無くせば地球人類は生き延びられる」 「……あの、そんな話を自動車メーカーの社長である私に」 「協力しないなら30年後に人類滅亡だぞ」 「……」 「30年後までにお前は死んでいるかもしれんが、このまま車を作り続け人類滅亡へ加担したまま死にたいか?」 「そんな事をしたら、私は人では無いですね」 「いや、してもしなくてもお前は人として死ぬだろ」 「いえ、心の、良心の話です」 「ふっ。今、お前の会社が造っている自動車は、何万人も殺したり不幸にしているがな」 「……先生、それは」 「まあ、文明が進んで助かった命も多いだろう。しかし、便利さや自己利益を追求し、他人や環境の事を深く考えない人類が多いのも確かだ」 「そう、ですね」 (で、兄さん。地球の女神の私は地球を救うために何をやるんですかね?)と、何をさせられるのか説明もされてないし、さっぱり分からないカリーナだった。
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