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留美へ
翌日。準基は早く目が覚め、軽くジョギングをしに出かけた。
早朝のせいかまだ薄暗く、待ちきれない犬達が飼い主と散歩しているだけだ。
少し走り疲れ、土手に座る。草がヒヤッとして冷たい。
時計を見るとそろそろ戻って空港へ向かわなければならない時間だ。
(そろそろ戻るか…アイツらも起こさないといけないし…相当飲んでいたからな…。)
準基は自宅に向かって走り出した。
自宅へ戻りシャワーを浴びてリビングへ戻ると大河が寝ぼけ眼で起きていた。
「おはよ、大河。」
「おはようございます、準基さん。いよいよオーストラリアですね。」
「おう。コアラ見たいな。」
「いいですね、見に行きましょう。大地をそろそろ叩き起こさないと…飛行機に間に合わなくなりそうだから。」
大河は立ち上がり大地の部屋へ行き、起きろと布団を捲り上げる。
大地も渋々起き、食事を済ませ準備を始めた。
空港に着き、留美にメールをする。
(今から飛行機に乗るよ。あと、約10時間後に会おう!)
準基はそうメッセージを送ると留美から直ぐに返事が来る。
(うん!待ってる!!楽しみにしてる。着く頃に空港に居るからね。)
準基と大地、大河はシドニーに向かって出発した。
「やっと準基に会える!やったぁ!!」
嬉しくて思わず叫び出す。
留美は朝から準基と何故かついて来る大地と大河の為に料理をしていた。
いつもダイエットを頑張っている準基に、準基の大好きな唐揚げやポテト、チキンサラダなどを用意していた。
〜♪
「…げっ…由真だ…。」
料理をしていると、先日から先にシドニー入りしている同僚の由真からの電話に思わず…溜息が出る。
また何か厄介事を持ち込んで来るのではないかと気が気じゃない。
「何?」
留美は溜息混じりに電話に出ると早速由真と諒太が騒ぎまくっている声が聞こえて来た。
「留美ーっ!!沢木がムカつくんだけど!?ねぇ!今暇!?!?」
由真が電話の向こうで騒ぎまくり、留美は頭痛がして来る。
「暇…じゃないかな。昨日言わなかった?今日準基が来るのよ!邪魔しないで!!そういう事だから!」
留美がそう言って電話を切ると、インターホンが鳴る。
(家の前に居るんかい!?)
インターホンの画面を見ると由真と諒太がケンカしながら留美の名を叫ぶ。
ドアまで叩き、近所迷惑この上無い。
(40近い男女が何してんのよ…)
留美は諦めて扉を開け、2人を中へ入れた。
「あのね、準基達が来たら帰ってね?」
笑顔で言うと、由真も諒太も「何でそんな冷たい事を言うんだ!?」と抗議して来た。
「…遠くからはるばるやって来て、あんた達居たらただでさえ長旅で疲れているのに、見た途端疲れるわよ。空気読みなさいよ。KY2人組。」
留美が言い放つと2人は酷いと喚き散らす。
「あのね、そんなんだから空気読めない2人組って言うのよ。沢木、あんたは由真ときちんと話した方がいいんじゃない?由真もだけど。」
留美は突然来た仕方ない2人組の客にコーヒーを差し出す。
「何で俺がコイツと!?」
諒太は何でだよ?!と由真に毒づく。
「私だって嫌よ!あんたみたいな恋愛ボンクラなんか!」
「恋愛ボンクラって何だよ!?」
「ボンクラじゃない!?なかなか好きとか言えないし、話しても憎まれ口しか出てこないし!告白する場所は選ばなくて大恥かくわ、かかせるわ。最低じゃない!」
由真は今までの経緯を含めて諒太にボンクラだと喚き散らす。
「2人ともやめなさいよ。由真、沢木、痴話喧嘩なら私のいない所でやってよ。」
「お、倉本寂しいのか?」
「心の底から迷惑なだけよ。」
留美は迷惑だとはっきり言って、諒太にいい加減にしろと忠告する。
「凹むわぁ…ほんとに塩だな。」
諒太はしょぼんとして上目遣いで留美を見る。
「あんたにだけよ。」
留美はそう言って、二人に用が済んだら帰ってと言うが、二人は準基に会いたいと頑なに帰ることを拒否して留美のマンションに居座った。
準基は飛行機の中からの窓の外を眺めていた。
大地と大河は先日の疲れもあり眠りこけていて静かなものだ。
敢えて静かでいいと思いながらも後輩2人の寝顔を見て吹き出す。
オーストラリアまで片道10時間程かかるので、色々と物思いに耽ってしまっていた。
まさか一年後に留美と結婚する様な仲に進展出来ていると過去の準基には考えもつかない。
ちょっとニコッとしてくれる女の子にうつつを抜かし、留美を蔑ろにしていたと思う。けれど留美はどんな準基でも全てを受け入れ、子供の頃と変わらず接し続けてくれた。
そしてやっと本当に大切な女性が誰かと気付く。
長く待たせてしまった。それでも留美は辛抱強く待ち続けてくれた。
物心ついた時にはいつも隣にいた。つまらないおままごとも留美とならやれた。保育園へ行くようになっても同じクラスでいつも留美が準基にくっついていた。
小学校へ入ると準基はサッカーで女の子に人気が出て来て、留美が少しずつ距離を取るようになった。準基はそれが少し寂しかったが、成長して行くと言うのはそういうものなんだろうと子供ながらに考えた。小学校の高学年になると完全に学校では留美と話さなくなり、家でお互いの部屋を行き来するだけになった。
それは準基にとっても一番の楽しい時間だった。
だが時々留美が寂しそうな目で準基を見ている事があり、何でだろうと考えたが、当時小学生の準基には分かるはずもなく謎のままだった。
中学生になると留美が少しずつ顔立ちが今の顔になってきて上級生から人気が出て来た。気が気じゃなかった。けれどある日恐れて居た事がおこった。
留美に彼氏が出来てしまった。
弓道部の一つ年上のやつだった。けれど半年経つか経たないかで別れてホッとしたのを覚えている。
けれど高校へ上がると彼氏がまた出来、ハラハラする日々が多かった。
部屋の隣から留美とその彼氏の笑い声が聞こえてきてそれが嫌で窓を叩きつける様に閉めた事もあった。
そして人生で一番絶望した日、大事なサッカーのプロテストの前日。
留美が彼氏とキスをしている所を見てしまった。
その翌日のテストはもうグダグダだった。
一番大切は日に尽く失敗した。
結果は望まない結果に終り、普通に大学に進学した。
高校卒業前からの不摂生で体型が酷い事になり、自分自身に自信が無くなり性格も陰キャになって行った。
思い出すと苦笑いするような事もあったが、留美と歩むための人生の前段階だったんだと思えば今は少しはいい思い出だと思えるようになった。
「先輩、先輩。起きてくださいよ。もうシドニー空港に到着しますよ。」
準基はいつの間にか眠っていたらしく、いの一番に眠っていた大地に起こされた。
「あ・・・もう10時間も経ったのか。」
やっと留美に会えると思いを馳せるが、準基は何故かドキドキして来た。
留美は時計を見ると、準基達が空港に到着する時間が近づいており変に緊張して来たが、とりあえず目の前に居るこの邪魔な2人に帰ってもらわなければと思った。
だが諒太が時計を見て空港へ行こうと言い出し、由真も行こう!行こう!と張り切り出し、本格的に追い返すことを諦めなければならなかった。
「あんた達…本気?」
留美は苦笑いして二人の顔を見て落胆する。
「うん。留美の彼氏を私はまだ生で見た事ないし。写真だけで。それに話ししてみたいじゃない?そんなユニークな人生歩んでいる人なら。」
「ユニークって…」
「そうだよな。人生イージーモードからの落胆しておデブ日陰陰キャ人生になって、倉本がずっと側で支えていたらまたやる気になって…ダイエット成功だろ?そんなオモロい奴なかなか居ないよ。しかも美人の倉本とそのうち結婚だろ?…神はきちんと公平になる様にしてるんだな…」
2人のうんちくを聞きながら、留美は空港へ向かった。
シドニーへ着くと時間は20時になっており、あたりはすっかり陽も落ちて暗くなっていた。
準基はスマホを出し、留美に連絡する。
「留美?着いたよ。どこ?」
準基から電話が入り、留美は空港入口に居ると伝えると準基は大地と大河を連れてそちらへ向かうと電話を切った。
そして空港入口ロビーに8か月振りに見る留美の姿があった。
「留美!」
準基は嬉しくなり走り出すと、留美も笑顔で走り出した。
久しぶりの再会にお互いキツくハグをしてキスをすると、大地も大河もニヤニヤとその光景を眺め、諒太は叫び出した。
「倉本ー!人前でなんてハレンチな事を!!」
諒太の絶叫に準基は目を丸くし、「何であいつ着いて来てんの?」と留美に聞くと、「由真と家に押しかけて来て昼からずっと居座って、追い払っても帰らないから迷惑してるのよ。」と言うと、準基はチッと舌打ちし、諒太に向かってシッシッと手で追い払うジェスチャーをした。
留美は準基達を車に乗せ、諒太と由真は車の最後尾に押し込み自宅へと出発した。
「準基荷物こっちの部屋置いて。大地くんと大河くんはそっちの部屋ね。」
荷物を置く様促すと、留美は早速夕ご飯の支度を始める。
「わ、俺の好きな留美の唐揚げだ。」
「当たり。暫く食べられていないだろうから作ってあげたかったの。」
留美が笑顔で言うと準基は嬉しくなり裏からハグをする。
「人前でイチャイチャするのはどうなんですかねぇ?」
諒太は悔し紛れに声を上げた。
「あれ?沢木さんまだ居たの?」
準基も負けじと意地悪くニヤっと笑い諒太をチラッと見ると、諒太は口の端を上げて準基をジロっと睨んだ。
そして大地と大河と由真はワクワクしながらその光景を眺める。
カオスな世界が目の前で広がる留美は、準基と諒太の頭をお玉で軽く叩き、静かに待っているか、皆んなと仲良く談笑して待っていなさいと指示し、準基と諒太は大人しく返事をした。
「あー…留美のご飯8か月振りだ…美味い…」
準基は味わう様にゆっくり咀嚼して食べる。
「ほんと!うまいっすよね!留美さんの唐揚げ!!早く日本へ戻ってきて週イチで作って欲しいっす!」
大地はものすごい勢いで唐揚げを食べ進める。
「おい!大地!俺が取ろうとしたの取るな!」
大河は狙っていたのにと嘆きながら大地に訴えていた。
「3人ともそんなに喜んでくれて作った甲斐があったな。日本戻ったら食べたいもの作ってあげるね。」
「待て、留美。コイツらに作ってやる事無いだろ?」
準基は納得行かないと言うと、留美は二人共弟みたいなものじゃない?と宥めた。
「倉本…。」
諒太は声をかける。
「何?まだ居たの?」
留美は塩対応で返す。
「お前ほんとに酷くない!?何で俺と山田だけ御飯と味噌汁、唐揚げ2個ずつなんだよ!?」
「あんた達が勝手に居座ってるだけじゃない!!」
「留美、落ち着け。こんなに沢山あっても食べ切らないから、もう少し分けてあげな。」
「いや、先輩!俺食べれるっす!」
「お前はもう少し遠慮しろ!!」
準基は大地にアホか!!とツッコミを入れ、何だかんだで賑やかで穏やかな夕食となった。
「しかし、鈴木さん。凄い痩せましたよね?」
諒太は驚いたと準基をマジマジと見つめた。
「ええ、おかげ様で。今77かな?今朝測ってみたら。」
「凄い!準基!体も締まったし!カッコイイ!」
留美は感動しちゃったと言ってにこにこして準基を見つめると、「ありがとう。」と準基も微笑み、諒太もブラボーと拍手する。
「留美の為に頑張って痩せようと言う気持ちが持てることが凄いですよ。」
由真は興味津々に準基に話す。
「えと・・・」
「あ、初めまして。留美と新卒で入った時からの仲良し同僚の山田由真です。」
由真は笑顔で右手を差し出すと、準基も快く握手に応じた。
「話には聞いています。・・・山田さんが沢木さんといつも喧嘩ばかりして大変だって。」
準基が笑いながら言うと、「留美!!酷い!!もっとまともな話とかあるじゃない!!」由真は怒りながら留美に言うと、「あら、だって今日だって準基や大地君、大河君が来るから帰ってって言っても全く人の話聞かないで、こんな時間まで沢木と居座ってるじゃない。ご飯までご馳走になって。」留美はつんとして横を向いた。
「も~!!準基さん!!留美っていつも会社でこうなんですよ!!」
「だから・・・あんたたちにだけよ。」
「留美、あんまり山田さんと沢木さんをいじめない様にね。」
準基はやんわり言うと留美は「いじめてないし!!」と喚き出した。
ひとしきり騒ぎ終えて由真と諒太は帰り、大河と大地も部屋へ行ってしまい、準基と留美は久しぶりに二人で晩酌をしていた。
「遠くからありがとう。準基。」
留美がふわっとした笑顔で見ると準基は愛おしくなりキスをする。
「うん。会いたかったから。本当に遠かったけど。けどあと3ヶ月だな。」
あっという間だなと笑う。
「うん。きっとあっという間に終わりそうな気がする。済んだら即座に日本へ戻るから。」
「フライングで戻るなよ。」
「戻んないわよ。失礼ね。準基はどう?主任慣れた?」
「うん。管理部の皆良くしてくれて。でも女性従業員は苦手だなぁ。」
「どうして?」
「痩せた途端に態度が180度変わるんだぞ。とても信用できないよ。しかもとどめは金準基に似ていてカッコいいだぞ?」
準基は毎日がその話題で溜息ものだと留美にこぼす。
「でも、金準基が準基に似ているのよね?」
「あれ?同じくらいの年齢じゃなかった?」
「そうだっけ?まぁいいんだけど。準基の事好きになられても迷惑だし。」
留美はニコッとして準基にもたれた。
「明日はゆっくりして、明日観光する?」
「うん、そうだな。それがいいかもな。」
準基は目的がある為、留美の提案に応じた。
花は大河がネットで調べて既に注文済み。大地はオペラハウスの周りを入念に調べていた。
明日は早朝に現地確認して、夕焼けの綺麗な頃に留美にプロポーズをしようと決めた。
翌日
太陽の光で目が覚め、隣を見ると留美が気持ち良さそうに眠っている。
(オーストラリアに来たんだなぁ…)
そんな事を思いながら留美の頭を撫でると、留美が嬉しそうに笑いながら眠っていた。
起こさない様にベッドを抜け、ジャージに着替えリビングへ行くと、大河、大地が待っており、マンションの周りを走る事にした。
「いよいよですね、準基さん!今日言うんですよね?」
大河が花の都合があるからと確認して来た。
「ああ、そうだよ。緊張して上手く言えるかわからないよ。」
準基は苦笑いして二人を見る。
「大丈夫ですよ、気持ちが伝われば。留美さんもきっと準基さんがプロポーズしてくれるの待っているだろうし。」
大河はそう言い笑う。
「とうとう留美さんが先輩のお嫁さんかぁ。何か一年前の社員旅行の時じゃ…考えもつかない状況でしたね。」
「先輩のお嫁さんって言うか、先輩が留美さんのお婿さんにってイメージが強いな・・・俺は。」
大地も大河も笑いながら話し、準基に笑顔を向けた。
「大地、大河…そうだな。でも、夢は叶えたな…と、思う。サッカー選手よりも得たかった夢だよ。留美と結婚する。小さい頃の自分に伝えてやりたいよ。頑張れば叶わない事はないってね。」
準基は空を仰いでそう話した。
留美は目が覚め横を見ると準基が居らず、バックから着替えを出した跡があり、ジョギングへ出かけたと気づいた。
(起こしてくれればいいのに…)
と思ったが、実際昨夜は久々の再会に思わず盛り上がってしまい、大地と大河に聞こえていなかったかと思う程だった。
昨夜の事を思い出し布団に恥ずかしさから顔を埋め、どんな顔をしようかと悩んだが、とにかく3人が戻るまでに朝食の支度をしようとキッチンへ移動した。
簡単に和食の朝食を作り顔を洗って3人の帰りを待つ。
4人で居ると日本に居た時の楽しい時間を思い出してほっとする。
1週間ほどはその生活が出来るので嬉しくて仕方ない。
だが準基達が帰国したらまた残りの3カ月はシドニーで勤めなければならない。
「はぁ。」
バルコニーヘ出て景色を眺めながら準基達が戻るのを待った。
「日本へ帰りたい…。」
気がつくと言葉に出ていた。
しばらくし準基達も戻り、4人で朝食を食べ、観光へ行く準備を始めた。
留美は3人を先ずダーリンハーバーへ連れて行った。
「準基!動物園があるの!!動物園行こう!!」
留美は準基と二人で行きたいと久しぶりに我儘を言ったが、大河も大地も快く快諾した。
夕方のミッションの為に都合も良かった。
「じゃあ大地、大河、昼ご飯食べたらここにまた集合な。」
そう言って一度別れ、留美は準基を連れサーキュラーキーからフェリーに乗り動物園へ向かった。
「船、大丈夫だよね?」
「うん、平気だよ。けど本当に南半球は夏なんだな。今頃日本は極寒だよ。」
「そうよね。もうお正月だもんね。でも今年は準基と海外で、しかもオーストラリアで真夏のお正月だから、来たのは仕事でだけど、この経験が出来るのは嬉しいな。」
留美はにこにこして準基と手を繋いだ。
「そうだな。でも日本へ戻って来てからも数年に一度とか、一年に一度とかで国内や海外へ旅行へ行こうな。」
「行きたい!!私ね、韓国へも行きたいの!!」
「……留美…お前も韓国ドラマの影響だよな…。宮廷モノ…。」
準基は苦笑いする。
「当たり!!準基も一緒に衣裳着て写真とか撮ろうよ!!」
留美は目をらんらんとして訴えかけると、準基は苦笑いしながら承諾した。
「俺…多分普通に間違えられるぞ…。金準基に。」
「大丈夫!!この人日本人です!!って言ってあげる。」
「頼みますよ、留美さん。」
二人は顔を見合わせ笑った。
その後も水族館、王立植物園などで観光を楽しみ、気が付くと夕焼け空が綺麗な時間になった。
「大地君、大河君、晩御飯何食べたい?」
留美は折角来たからと、若い2人に食べたいものがあるか聞いた。
「あー…留美さん、少しだけオペラハウスへ行きませんか?写真撮りたくて。」
大河は夕焼けで綺麗に見えるオペラハウスを撮りたいと上手く言い、4人で行く事にした。
準基はいよいよ留美にプロポーズだと緊張したが、やっとこの時が来たという気持ちもあり胸がいっぱいになる。
オペラハウスへ行くと人が沢山居たが、準基は朝確認したのもあり、プロポーズしている所も写真に納めてもらおうと思っていたので自分が決めた位置までさりげなく留美を誘導した。
「留美、少しだけ後ろ向いていて?」
「えー?何?」
「いいから。」
準基が言うと渋々後ろを向き、「ねぇ?未だ?」と言っていた。
大地はトイレ!と言って抜けている間に急いで花を取りに行き準基に渡す。
準基は緊張しながらも留美に声をかける。
「留美、こっち向いて。」
「もう!準基!!何でうし…ろ…え?」
目の前に100本もあろうかと思う赤いバラの花束を持って準基が立っている。
そして留美の前に片膝を付き、婚約指輪を留美に見せる。
留美は状況を飲み込み、目から涙が溢れだした。
「留美、これからも君と一緒に居たい。お爺さん、お婆さんになっても君の笑顔を隣で見て一緒に笑って居たいんだ。長く待たせて本当にごめん。鈴木準基と結婚してください。」
準基は婚約指輪を留美の指にはめると、留美はキラキラの笑顔で準基の目を真っ直ぐ見つめる。
「するわよ!当たり前じゃない。何年待ってたと思うのよ!」
留美はそう言って準基にキスをした。
終
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