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後輩達の忖度と留美の思い
スマホから音楽が聞こえる。
準基は寝ぼけた頭でスマホを取り電話に出る。
「…あい…鈴木です…」
「先輩!!6時半過ぎてますよ、何処に居るんですか!?」
大地の爆音ボイスに耳がつんざかれる。
大河も電話の向こうで叫んでいて、既に二人は出来上がりつつあった。
準基は直ぐに支度をして後輩2人が待つ居酒屋へ向かった。
駅前の赤提灯という居酒屋は大衆居酒屋で、毎日の様に賑わっている。
大地と大河もわざわざ電車に乗ってこの居酒屋へ通う常連だ。
準基もたまに付き合い程度に行く事もあった。
「せーんぱーい!!こっちぃー!!」
店の扉を開けると、クールな大河がご機嫌で準基を大声で呼び、席はこっちだと大地に手を引かれて行く。
「…お前ら…何本飲んでんだよ?」
机の上に置かれているグラスの数を準基は思わず数えそうになる。
「先輩!飲みましょう!!」
大河は店員を呼び、準基の分のオーダーをすると直ぐに生中が運ばれて来て、3人で乾杯した。
「先輩、佐藤と本気で付き合うつもりなんですか!?」
大地が開口一番話し出すと大河も佐藤はやめろ、やめろと反対しだした。
「あのな、俺にも春がくるかもしれないだろ?少しくらい応援してくれよ…。」
寂しそうに後輩二人の目を見るが、二人は頑なに拒否する。
そもそも愛莉と準基は似合わない、愛莉は準基の金目当てだ!優しい先輩に漬け込んで居るのが腹が立って仕方が無いなど二人の気持ちを準基にぶつける。
「あのな、人は変わる事もあるだろ?もしかしたら前の事は反省しているかもしれないし。憶測だけでそんな事を言ったらダメだぞ。お前ららしくもない。」
困って二人を説得しようとすると、突如頭の上から話しかけられた。
「その二人の言う通りよ。あんたもいい加減目を覚ましなさいよ。」
「!?留美っ!?何でお前がこんなとこに居るんだよ!?お前まさか俺の後つけて…」
準基が目を丸くして言うと、
「ばっかじゃないの!?なんであんたの後なんかつけなきゃならないのよ!?私は会社の人達と食事会よ。トイレに行って戻ろうとしたら準基居るんだもんびっくりしちゃった。」
留美はそう言うと大地と大河の方を見た。
二人は留美があまりに美人でびっくりし、黙ってしまった。
留美はそのままストンと準基の隣に座り、「準基の幼馴染の倉本留美です。いつも準基がお世話になってます。」と明るく営業スマイルで挨拶した。
『いえ…こちらこそお世話になって…ます。』大地も大河も唖然とする。
「ほら、留美。二人がびっくりしてるだろ?!お前会社の人らの所へ戻れよ。」
鬱陶しそうに準基は留美を見て手でシッシッとやる。
「いいじゃない!ちょっとくらい!!それよりも準基、昨夜飲み過ぎだったのにまた今日も飲むの?!大丈夫?!」
留美は今日くらいやめたら?と注意する。
「お前こそ飲んでるんじゃないのか!?お前、昼間車で出かけただろ?」
準基は心配になり突っ込む。
「あら?心配してくれるの?準基はやっぱり私には優しいわねぇ。でもご心配なく!車は置いて来ましたぁ〜!」
二人の言い合いを見て、大河も大地も準基がずっと好きだった女の子は『留美』だと悟る。
「留美さん、美人ですね!先輩いいなぁ。こんな綺麗な幼馴染が居て!俺なんてオカメみたいな顔してるのに結婚した不細工な幼馴染の女の子しか居ないっすよ!」
大地は羨ましいとボヤく。
準基は「羨ましいか?性格男みたいだぞ…」と留美を見て溜息を吐く。
「先輩と留美さん、よくお似合いですよ?先輩、佐藤よりも留美さんの方が先輩には相応しいと思いませんか?」
大河は酔っているのもあり、見たままの意見を言った。
そんな事は言われなくても分かっている。腐れ縁も板に付いている所である事も準基は理解している。けれども今準基の心の中には愛莉が居る。複雑過ぎる心情を抱えて何となく頭も胃もぐるぐるする。
話していると留美の会社の人が探しに来て、留美は「またね。」と去って行った。
「先輩…俺は留美さん推しです。なあ、大河。」大地は大河に同意を求める。
「うん。留美さんは女神の様に美しいです。先輩はずっと一緒に居過ぎてマヒしてるんですね!僕なら速攻で告ります!」大河は真剣に語る。
準基は大河や大地の様に出来ていれば今こんな状態じゃないよなあ…と二人を羨ましげに見つめる。この後も3人で会社の話や、仕事についてや、佐藤愛莉の話で夜が老けて行った。
「先輩、せーんぱい!大丈夫ですか!?」
準基は愛莉の事、何故か留美の事で悩んでいたのもあり、昨晩に続きつい飲み過ぎてしまった。
「大地、先輩のスマホってロックされてるか?」
大地は飲み過ぎで眠りこけている準基の上着のポケットからスマホを取り出し、大河に「どうするの?」と聞いた。
「留美さん、留美さんに電話して。」
ロックがかかっていたが準基の顔を読み込ませ解除すると、準基?と留美?らしき幼い頃の二人の写真がホーム画面になっており、大地と大河は思わず微笑む。
そして急いで留美の番号を探す。
「あ、よくかける所の一番上にある。」
大地は見つけ留美に電話した。
その頃留美は既に自宅へ戻り、お風呂にも入って眠る所だった。
〜♪
「え…準基?」
留美は準基の部屋を見るが電気が点いておらず、どうしたのかと電話に出た。
「もしもし?準基、どうしたの?」
「もしもし!!留美さん!先程はどうも!大地です!」
大地の声の大きさに留美は思わずスマホを離す。
「あー、さっきはありがとうございました。えと準基は?どうかしたの?」
留美は何となく嫌な予感がしてきた。
「先輩が酔い潰れて…」
大地の言葉に留美は天を仰ぐ。
「あー…やっぱりかぁ。昨日も飲んだから…てか、大地君も大河君も終電逃したんじゃ…」
留美は時計を見て慌てる。
「あはは。そうなんですよ。先輩がこんなんなるなんて…留美さん、良かったら先輩迎えに来てもらえますか?留美さんお酒結構飲んだ感じですか?」
留美は大地と大河からのSOSに応じる事にした。
会社の食事会は最初の一杯だけ飲み、後は黒烏龍茶で過ごしていた為、酔いは完全に醒めていた。
「大丈夫よ。今から行くから待っていて。車、ホンダのヴェゼルの黒だから。」
二人にそう伝えて、急いで着替えて駅へ向かった。
駅のロータリーに着くと大地と大河に挟まれ準基は眠りこけていた。
留美は車から降りて、二人の所へ行き、座り込んで眠っている準基の目の前に座り話しかけるが準基は完全に眠っていた。
「ごめんね、このでっかい熊運ぶの手伝って貰える?」
留美は苦笑いしながら二人に頼むと、大河も大地も『こんな素敵な幼馴染の女性が居て、何で告白しなかったんかね?この人は?』と呆れ顔で小声で言いながら準基を車に押し込んだ。
留美は二人に家まで送るよと言ったが、このデカい準基を細身の留美が運ぶのは無理だろうと二人は言い、準基の部屋へ敢えて泊まらせてもらうと断言し準基の自宅へ向かう事になった。
「おばさーん!早く開けてー!」
準基の自宅へ着き、玄関まで3人で運びインターホンを押すとモニターを見たカナオが急いで扉を開けた。
「まぁ!留美ちゃん!あ…えと…」
カナオは状況を読み取り、大地と大河に準基を一階の客用の部屋まで運ぶのを頼み、部屋に敷いた布団に寝かせた。
「ごめんなさいね。こんなになるまで飲んで…ほんとに・・・大河君と大地君にも布団用意したから今日は良かったら寝て行ってくださいね。」
大地と大河はお礼を言ってとりあえず準基の自宅へ予定通り泊まらせてもらう事にした。
「じゃあ、私はこれで…」
留美も自宅へ戻ろうとするとカナオに呼び止められた。
「あの、留美ちゃん…怒らせる様な事言ったらごめんなさいね。」
カナオは戸惑いながら話す。
「…はい。」
「留美ちゃん、あなた準基の事好き?」
突然聞かれて目が点になる。
「え!?」
好きか嫌いかなんて聞かれたら…好きだ。
留美が結婚しないのも、途中から特定の相手を作る事をやめたのも準基への気持ちがあったからだ。準基が小さい時から一緒で、常に側に居て、いつも何だかんだ言っても優しく受け止めてくれるからだ。
準基が痩せていようが熊みたいだろうが、イケメンだろうが不細工だろうがそんな事留美には関係無かった。
「……好きです、大好きです。私の中で準基が世界で一番大切な男性です。でも、何か言うタイミング逃しちゃって…ごめんなさい。おばさん達が迷惑なら準基の部屋へ遊びに行くのもやめます。」
留美がしょんぼりして言うとカナオは留美の肩を両手で掴んだ。
「困る!」
「へ?」
カナオの叫びに留美も大地も大河も呆気に取られた。
「留美ちゃん!お願い!準基は何か今他の女がいいなんて、熱病にでも罹ってると思うんだけど…根本的には留美ちゃんがずっと好きなのよ!」
カナオが力説すると大地も大河も首を縦に振る。
「だから!諦めないで!準基の側に居てやって!準基はあなたが居ないとダメなのよ!プロテスト落ちたのも…実は…当時あなたとあなたが付き合っていた子があなたの家の玄関先でキスしているのをテスト前に見ちゃって…それで…バカでしょ?メンタル弱くて…」
カナオは呆れながら当時の事情を話す。
「おばさん…それ、ちょっと……。言われると…キツイ…。聞きたく無かった……だから準基、何でサッカーやめたのかとか落ちたのかとか言わなかったんだ…。」
留美は血の気が引いて行く。
準基がプロテストに落ちたのが自分の事も原因だからだ。
「でもね、それくらいで落ちるなら受からなくて良かったのよ。だって、選手になったらもっと辛い事多いし、日本代表とかになって、シュート失敗したら?ものすごい勢いで叩かれて、留美ちゃんが他の男の子とキスしているの見たくらいで動揺するなら準基は何にせよ無理だったのよ。だからあの子の事を少しでも男として好きなら…せめて準基の側に居てあげてほしいのよ。おばさんのわがままだってわかってる。けど、あの歳になっても準基も独身で居たのは…きっと留美ちゃんと居たいからだと思うの。」
カナオはそう伝え満足すると、「おばさん寝るねー、あと頼むねー!」と、部屋へ戻って行った。
留美は(とうとう言ってしまった…)と大きく溜息を吐いた。
「留美さん、やっぱり準基先輩の事好きなんですね。美人だから誰とでも結婚出来そうなのにして居なかったのは…」
大河は嬉しいですと言って笑う。
「何であなた達が嬉しいのよ?」
留美は恥ずかしさで真っ赤になって横を向いていたが二人に敢えて聞いた。
「準基さん、きっと最後は留美さんを必ず選びますよ。近いうちにね。」
大河は二人のやり取りを見ていれば分かると笑う。
「いいっすね!先輩は…こんな着ぐるみ着ていてもこんなに素敵なナイスバディで美人の…彼女候補が居て…ずるいっすよー!」
大地は寝ている準基のオデコをデコピンした。
準基は眉間に皺を寄せて寝返りをうつ。
「二人共、ありがとう。とにかく、準基もその…愛莉って子の事がはっきりして整理できなきゃ無理だろうし、私は今まで通りにしてるわ。」
留美は笑顔で自宅へ戻って行った。
「ほんとに、こんな森の熊さんみたいな人が何であんな美人にモテるんだろうな?」
大河は隣でイビキをかいて寝ている準基を見て微笑む。
「なぁ、あの写真って準基さんかな?」
大地は床の間に飾ってある写真を指差して手に取る。
「うわ…カッケ…。今とは別人だ…。」
大地と大河は写真を見るなり口がポカンと開いた。
高校時代の準基のサッカーの試合の写真を見て、二人共準基の今とのあまりにも違う姿に暫く唖然としていたが、とりあえず眠ろうと眠った。
翌朝
準基は少し頭が痛いと感じ目が覚めた。
両端を見ると何故か大地と大河が眠っている。
「?…あれ?昨日………」
準基は暫く考えたがとりあえず飲み潰れたという事だけは把握出来た。
"コンコン"
部屋がノックされ、留美が顔を出す。
「準基、おはよ。具合どお?大丈夫?」
準基は留美がいる事に少し驚く。
「あ…ああ。大丈夫。…留美、何で居るんだよ?」
「おばさんに頼まれたのよ。パートがあるから準基とお客二人の朝ごはんの支度頼みたいって。まぁ、休みだし、暇だしいっか。と思って。大地君と大河君に迷惑かけちゃったから。もう少しで出来るから…準基お風呂入って来たら?」
留美はそう言ってキッチンへ戻って行った。
準基はとりあえず両脇の二人を起こす。
「おい、大地。おい、大河。起きろ。」
準基に揺すられ二人は「頭いて〜…」と、言いながら目を開けた。
「あ、おはようございます!先輩!よく飲みましたね!!」大地は起きた瞬間から元気だ。
「準基さん、おはよう御座います。大丈夫ですか?」大河は少しダルそうにしていた。
「あの…昨日ってどうやって帰って…?」
準基は不思議そうに聞く。
「先輩のスマホで、留美さんに電話して頼みました。車で迎えに来てもらって…それでそのままボク達はここでお泊まりです!」大地はにこにこしながら話す。
「え?何?何で留美!?」
準基は血の気が引く。
「…先輩、頼めるの留美さんしか居ないですよね?」
大河は呆れ顔で準基を見た。
キッチンからいい香りがし、ヤロー3人で行くと留美が朝食を作り終えて待っていた。
「大河君、大地君、おはよ。昨日はありがとうね。調子はどお?頭痛くない?朝食食べたらお風呂入ってさっぱりしてね。」
留美はそう言いながら淹れたてのコーヒーを置き、どうぞ食べてと促した。
大地も大河も『いただきます!』と手を付け、美味しい、美味しい、うまい、うまい言いながら食べる。
「留美さん、料理うまいっすね!!俺の彼女になってもらえませんか!?」
大地が調子よく言うと、何故か準基が近くにあった新聞を手に取り大地の頭を結構な力で叩く。
「先輩!痛いじゃないっすか!?何するんですか!?」
大地は横暴だ!と抗議する。
「別に…何かイラっとしたから…」
準基は適当に誤魔化して朝食を食べ進め横をむくが留美を賞賛する大地へのイライラが止まらない。
準基のその様子に大地と大河は顔を見合わせて笑い、準基は「何だよ!?お前ら!!」と言い、留美もそんな準基が可笑しくて笑い朝から賑やかに過ごした。
昼前に二人を留美の車で自宅迄送り、二人きりになった途端、急に二人は緊張し出す。
「て…天気いいな。」
いつも二人で部屋で飲んだくれているくせに場所がいつもと違うせいか準基は何故かどもる。
隣の留美を見ると確かに大河と大地が言う様に留美は傍目から見ても美人だ。
幼馴染で一緒に居る事が当たり前過ぎて顔の事など気にもしていなかったがモテて当たり前だと改めて思った。
「ねぇ、準基。天気いいから…ドライブ行こう?いい?大丈夫?てかいいよね?彼女居ないもんねー!」
留美は緊張をほぐす様に笑いながら言い、準基の反応を見て楽しむ。
「お前だって彼氏居ないだろ!?失礼な奴だな!!」
「え?!私昔は居たもん!準基はゼロじゃない!!皆んな同級生の子達、準基は女に興味ないのか!?ゲイなのか!?って言っていたわよ!」
「っな!?はぁ!?皆んなでそんな事話してたのかよ!?あのなぁ、俺のお眼鏡に叶う女の子が居なかったんだよ!」
準基は留美を意識し続けて来た人生だったので、(仕方ないだろ!)と心の中で叫んだ。
「ははは…おかしぃ…あ、ねぇどこ行く?準基行きたい所ある?」
「うーん…あ!ディズニー行こうぜ!俺、何年も行ってない!」
「え!?ディズニー!?準基と?…仕方ないなぁ…いいよ。一緒に行ってあげる。」
留美が少し赤くなっていたのを準基は見逃して居なかった。
いずれ愛莉と付き合う様になったら、もう二度と留美と出かける事は無いかもしれないと思い、最初で最後だと決め留美が大好きなディズニーを選んだ。
「わぁー!準基見て!ミッキーマウス居るー!写真撮りタァい!早く!早く!」
留美は大はしゃぎで入場早々にミニーの耳カチューシャを買い、またそれがよく似合い、(俺の幼馴染サイコーかよ?!)と、思ってしまった。
ミッキーマウスと写真を撮っても留美の方が可愛くついつい見惚れてしまう。
「準基!!ねぇ!次!ビッグサンダーマウンテン乗ろうよ!!」
留美のハシャギ様に来て良かったと思う。
ただ物凄く疲れる…。
「留美…ハシャギ過ぎ…。」
準基はしんどくて座り出した。
すると留美は小首を傾げ、「だって…準基と二人だもん楽しいよ。」
そうサラリと笑顔で言い、準基が照れている暇もなくシンデレラ城へと手を引いて行く。
そして…
「ねぇ、ねぇ、準基!あのね、シンデレラ城の前で写真を撮ったカップルは結婚出来るんだって!?実験してみない!?友達や幼馴染でも有効なのか!?」
留美は目をキラキラさせて準基にそう提案した。
「まぁ、どうせ都市伝説だろ?いいよ。撮ろうぜ。」
準基は通りがかった人に頼み、留美と並んで撮ってもらう。
「手…繋いでもいい?」
上目遣いで留美が見て来る。
「…ほんっとにズルイなお前は…」
そう言いながら準基は留美の手を取り恋人繋ぎをして撮ってもらった。
この都市伝説が本当に当たってしまったら…愛莉との関係は無くなるのか…と準基は思っていた。
「ねえ、準基。さっき言っていたズルイって何よ?」
留美は歩きながら気になりまた小首を傾げながら聞くので準基は(そういうところだよ!!)と心の中でツッコむ。
大地と大河を降ろした後からの幼馴染の可愛い仕草の連発にどうにかなりそうだと思いながら留美を見る。
「何よ?」
「…ほんとに…しょうもない奴だな。」
「はい?!しょうもないのは準基じゃない!!」
「何がだよ!?」
「昨日も飲みつぶれて!」
「はい。はい。すみませんね。」
準基は留美の頭をポンポンとして、次行くぞ!と手を引き、手を引かれる留美は何故か赤面が止まらなかった。
留美の好きな乗り物に乗るだけ乗って、夕焼けが綺麗な時間になった。
準基は久しぶりに留美とはしゃいで遊び、心の底からとても楽しみ充実した一日だと感じる。
留美と歩いていると(何であんな男がこんな綺麗な女性とデートしてるんだよ?)というような顔をして見られる事が始めは気になっていたが、留美があまりにも無邪気にとても楽しそうにはしゃぐので終いには周りの目などどうでも良くなった。
夕方になり少し肌寒くなり留美がくしゃみをした。
「っくしゅん!」
綺麗な人はくしゃみ迄可愛いのか・・・と思いながら自分の上着を出して留美に着させた。
「風邪ひくから、着ろ。」
「ありがとう・・・ふふ。ぶかぶか・・・。」
留美はそんなことすら可笑しくてけらけらと笑う。
「風邪ひくよりましだろ。」
「うん。でもこうした方がもっとあったかい!!」
留美は準基の腕に自分の腕を絡めてぺったりくっついて歩く。
「お前・・・俺は好きな人が居るんだけど・・・。」
「佐藤愛莉。」
「フルネームで言うな。」
「今はまだ付き合ってないんだし、それに準基は私の大切な一番の男友達だから、私は準基に何してもいいの!」
「何だよ?それ?」
「いいの!!そうなの!!」
留美はそう言ってにっこりと笑って準基にその日一番と思えるくらいの笑顔を見せた。
(中学の時に勇気を出して準基に好きって言えば良かった・・・。)
(一番言わなくちゃいけない時に勇気が出なくて、全てを、留美を失うのが怖くて言えなかった。)
二人はそんな事を思いながら遊園地デートを楽しんだ。
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