1・アンラッキーな日?

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 どうにか持ちこたえて、無事、48階に到着。  その超弩級世界遺産なみのイケメン氏は、開いた扉に手を添えて「どうぞ」と目で合図した。  レディーファーストの仕草も堂に入っている。 「ありがとうございます」  わたしは小声で答え、そそくさと横を通り過ぎようとした。 「あっ」  と小さな声を立て、彼の手がわたしに向かって伸びてきた。  な、なに?  驚いて見上げると、その人は優しげに目を細めた。 「失礼。これがついていたので」  男の人らしい骨ばった長い指に挟まれていたのは、小さな枯葉。  うわ、こんなのつけて歩いてたのか。 「あ、ありがとうございます」  あまりの恥ずかしさに、わたしはまともな挨拶も返せず、エレベーターから飛びだした。  はあー。まだ心臓がどきどきしてる。
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