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ゴンは何も言わず、涙を流すネコテラスをじっと見つめていた。
「もうあの子の命が短いのは覚悟した。でも諦められなかった。あの日の夜、アタシはあの子をお腹に包めて一緒に寝た。白猫たちはクッションで団子になって熟睡していた。ご主人も隣の部屋でもう眠りについていた。本当はアタシたちの傍で寝て欲しかったけどね。夜中の何時くらいかしら……正確に知る訳はなかった。あの子の息が突然 荒くなったの。まるで全身が心臓そのものであるかのような酷い呼吸だった。アタシは気が動転して起き上がった。最後の最後には安楽死という手もある。お医者さんの言葉が頭の中でぐるぐると駆け巡った。いよいよこの時が来たの!? もう駄目なの!? ねえ嘘よね!? 誰かアタシに嘘だと言って!! 何故この子じゃなきゃいけないの!? 誰かこの子を助けてあげて!! 無理なのは分かってる!! けど誰か……助けて!! ゴンちゃんに会わせるんだから!! ゴンちゃんに喜んでもらうんだから!! この子が生きられるならアタシがいくらでも死んでやる!! だからどうか……神様――。暗がりの中でアタシは懸命にあの子の体を舐めた。でも……あの子の状態は変わらなかった。変わる筈もないのに、それでも元気になりますように、って……。凄く苦しそうだった。アタシはあの子に顔をくっつけた。ごめんねサビ猫ちゃん。丈夫に生んであげられなくて。ゴンちゃんと一緒に付けたかった名前も呼んであげられなくて。もっといっぱい遊びたかったね。お母さんも連れてってよぅ……あなたが行こうとしてる場所に……。涙が止まらない……あの子の顔が忘れられない……忘れられない……」
ネコテラスがゆっくりと倒れる。地べたに頭をくっつけ目を閉じると、また「ごめんねサビ猫ちゃん」と呟いた。
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