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ゴンが駆け寄る。
「コマ! 大丈夫か、少し気を休めろ」
叱るように言うと、ネコテラスの前足を恐る恐る揺すった。
初めてネコテラスに触ったその感触は、まるで剥製のように硬くそして冷たかった。
「アタシはいつの間にか眠り込んでいた。夜だったせいもあるけど、あの子を看病しているうちに寝落ちしてしまったの。どれだけ寝てたんだろう。夢すらも見なかった。ただ真っ黒な闇が広がる情景が見た夢だったのかもしれない。本当の疲労困憊とはああいうことなのね。突然、体が揺れて目が覚めた。ご主人がアタシを起こしてくれたの。あの人は正座で、アタシの名前を繰り返し呼んでいた。コマちゃん、コマちゃんって。そして、震えた表情で、アタシに手を当てて、言ったの」
(コマちゃん。サビ猫ちゃんが……死んじゃったよ)
「ご主人は泣いていた。ぽろぽろと涙を流して泣いていた。アタシは飛び起きてあの子を確かめた。見つけた瞬間、一気に血の気が引いたのを覚えてる。目の前に……完全に息が絶えたあの子の姿があった」
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