喫茶もふもふハウス

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「ゴンちゃんに子供たちを会わせた日の事は覚えてるわよね?」 ゴンは頷いた。 「あの橋の下。ゴンちゃんの住み家。全部で5匹、連れてった。皆アタシと同じ白猫だった。ゴンちゃんが子供たちと遊ぶ姿を見て、アタシは純粋に安心した。でもね、やっぱり心の片隅にあるもやもやした気持ちは晴れなかった。当然よね。アタシはあの子を連れて来なかったんだから。ゴンちゃんにあの子を会わせられなかったんだから。アタシは……嘘をついていたんだから」 と項垂れる。 「バレないように振る舞ってたつもりだけど、もしかしてゴンちゃんは気づいてた?」 ネコテラスが訊いたが、ゴンは黙っていた。 「あの子はね、生まれたときから体が弱かったの。息をするのがやっとみたいに。ゴンちゃんと同じ男の子だった。ゴンちゃんにそっくりなオスのサビ猫。凄いでしょう? 三万分の一のサビ猫がまた生まれたのよ。信じられなかった。あの子がお腹から出てきたとき、アタシは本当に奇跡だと思った。ひとりで歩けるようになったら、絶対にゴンちゃんに会わせなきゃ――そう思ったわ。そう思ったのに……。あの子は……死んでしまった。あんなに小さかったのに、ひとりで虹の橋を渡ってしまったの」 堪えきれなかったのか、ネコテラスがまた涙を流した。
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