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「いちいち泣くなよコマ」
ゴンが苦笑いで宥めた。
「ゴンちゃんに子供たちを会わせた一週間前かな。アタシは自宅であの子と一緒に寝ていたの。いつにも増して呼吸が苦しそうだった。それより前に、ご主人があの子を病院に連れて行ってくれたの。もちろんアタシも一緒だった。診察室の長い待ち時間。結果は残酷なものだった。最後の最後には安楽死という手もある。結局は死を待つしか術がない。お医者さんの話にアタシはそう悟った。ご主人は頭を掻いて愛想笑いしていた。アタシはご主人の横顔を見つめながら胸の中で問い掛けた。あなたはこの子をどう思っているの? お医者さんと話すその掠れた声の意味は何? ちょっと目を赤くしてるのは、やっぱり悲しいから? 白猫ちゃんたちと同じでこの子を愛してくれてるのよね? って。アタシは診察台に目を戻した。震えてうずくまるあの子を撫でてあげたけど、アタシの体にあった冷え冷えとした脱力感はずっと消えなかった。これは避けることのできない現実。とても嫌だった。でも受け入れるしかなかった。この子は……この子は……もうすぐ死んでしまうんだ……ゴンちゃんに……どうしても……会わせたかった……会わせたかったのに……」
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