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放課後
グラウンドで一人走るあいつを窓にもたれて俺は見つめる。
今日は委員会で遅くなった。
部活の時間はとっくに終わってるはずなんだけど、また一人で自主練かな……?
相変わらずの綺麗なフォーム──
夏のあの日、これが初恋なんだと気がついたのは出会ってから少し後のこと。
自分の気持ちに素直になったら、モヤモヤとしたものがすとんと胸に落っこちた。
走り終えたあいつは息を整えゆっくりと歩き、こちらに体を向けた瞬間に視線が絡まる。
「あ……」
声は届かないけど、身振り手振りで「そこで待て」と言われた気がした。
ここに留まろうか、帰ろうか……
迷っているうちに廊下から足音が近づく。
「ごめん、待たせて……」
息を切らして教室に入ってきたあいつは、そう言って真っ直ぐ俺を見つめて近づいてきた。
カーテンが風に舞う。
フワッとカーテンの白さに包まれたその時、あいつの唇が重なった。
「ファーストキス、貰っちゃった」
悪戯っぽく笑うあいつに、ドキドキを誤魔化すために俺からもキスをする。
一瞬だけ重なった二人の唇が離れた時、目の前のあいつの顔が思いの外真っ赤になっててちょっと驚く。
「お返しだ……」
俺はそう言って照れ臭さを誤魔化すので精一杯だった。
end
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