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「ねえ美宇。卒サポって聞いたことある?」  沙理があんみつもまだ到着しないうちに、めずらしく一気に切り出した。 「なに? 卒レポ?」 「卒サポ!」  周りの席の女の子たちの耳がダンボになったのを知ってか知らずか、沙理は声を落として続けた。 「処○卒業サポート。膜が重たいっていう女子たちのを、慣れてる大人がもらってくれるんだって。」 「はあ⁉️」  美宇は思わず大きな声を出してしまった。  沙理が慌てて両手を下に下にと振った。そして小さな声で説明した。 「サイトを見てたらね、男の人って、女の子がはじめてだとめんどくさがるんだって。  あと、今どき高校生で経験がないなんて、自分の彼女には実はとんでもない欠点があるんじゃないかって、疑いを持ったり。  とにかく処○のままなんて、いい事ぜんぜん無いらしいのよ。」  美宇は人差し指で両のこめかみを押さえて頭を振った。そして目を閉じたまま言った。 「あのね。  あなた、完全に洗脳されてます。」 「え、でも読んでてすごく納得いくと思ったんだけど。」 「それが詐欺の特徴です。全部忘れてください。」 「さ、詐欺……。」  沙理は動揺はしたようだが、うなずかない。  美宇は無言で三回うなずいたあと、目を開けて沙理の目を見た。 「その卒サポとやらを利用した女の子たちの、未来の彼氏および旦那さんの心の叫びを代弁しましょう。」 「え? は、はい。」 「ーー『他人(ひと)の女に手を出すな❗』」  バーン!!  テーブルにまだ何もなかったので、美宇はこぶし二つでテーブルを叩いた。さらに、ビビっている沙理に追い討ちをかけるように言った。 「利用者にはたぶん、未成年も多いでしょう。  ということは、未来の彼氏および旦那さんの心の叫びはーー  『訴えてやるからな❗』」  またもテーブルをバーンしたので、店内はすっかり静まり返った。  そんな中で、沙理がコクコクとうなずいた。 「そうだよね💦」 「そうよ。そんなもの、双方にとってよくないことなの!  ああ、力説したら、お腹空いちゃった。」  ベストタイミングであんみつが運ばれてきた。 「いただきます♪」  力業で沙理の心の揺れを止め、ひと仕事終えた美宇は、優雅にあんみつを食べ始めた。  沙理もそれに続いて、「そうだよね、詐欺ほど巧い話はないっていうよね。」と、あらためて気づいたように言った。美宇は、沙理の騙されやすさと改心の早さはまるでコントだと思って、軽く吹いてしまった。
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