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朝帰りして怒られた弟の話
んーーーーーーーーー。
まずいなぁ、あと一人なんだけどなぁ。
良い人材がここまで見つからないこと、ある?
タイムリミットは、明日なのに?
やっばいなぁ、と思って、街中で思わず天を仰いだら。
ん?あれっ、朝焼け始まってる?!
あちゃぁっ、流石に寮に戻らないと!警備が交代しちゃうと色々めんどうなことになっちゃうんだよねぇー。
『転移 学園寮の前』
魔法を唱えて転移した瞬間に、一応木陰に隠れて周りを確認した。
よしよし良かった、まだ僕が買収した警備から変わってないね。
これなら大丈夫、とホッとした僕は、堂々と朝帰りを決行した。
ところまでは、良かったんだけどなぁ……?
「ハイル!!!!」
王族寮に入った瞬間、玄関先で怒号が響いた。
お兄様だ!
最近あまりお顔を見れていなかったから、会えてとても嬉しい。
でも、どうして怒っているんだろう?
それにこの時間まで起きているなんて、お兄様に不調があったらどうするの??
「お兄様、どうしたの?」
でもでも怒声でも、体も心配だけど、声を掛けてくれたことが嬉しい、なんて。
僕のお兄様不足、尋常じゃないかも。
「この時期に朝帰りなんて、何を考えてるんだ。」
「あれ、お兄様。ヤキモチ妬いてくれたの?」
うれしくって、ニコニコ、と、ブラコン全開の返しをする。
うー、はぐらかしてごめんね、お兄様。
まだ、必要な準備があるんだ。
「最近、目に余る。お前の評判にも関わるんだぞ。」
「えーーー、今更だよーお兄様。お兄様も、そういうこと、するでしょ?」
潔癖なお兄様だけれど、断れなくて側近と娼館に行ってるの、知ってるんだからね?
アレ僕、すっっっっごぉぉぉぉっく、嫉妬するんだよ????
「……」
「んふふ、お兄様、そんなに気にしなくても、大丈夫です。僕ももう、大人ですから!」
信じて、お兄様。
そんな気持ちも込めて、お兄様に手を伸ばした、その時。
「その手で触るなっ!!!!」
バシッ、と本気ではたき落とされた。
えっ、
泣く。
うっかり涙目になりそうだったのを、慌てて堪える。
お兄様は自分でやったのに、何故か驚いたようにこちらを見て。
「悪い……」
バツが悪そうにそう言った。
「……んーん、大丈夫、だよ、お兄様。」
本当はちょっと傷ついたけど、でも、お兄様の方が痛いって顔をしたから。
「ハイル。」
「なぁに?お兄様。」
呼ばれて返事をするけど、お兄様は、俯いたまま。
そのまま、くるっと踵を返してしまう。
「……お兄様?」
もう一度呼びかけたけど、応えてくれなくて。
お兄様が2階に消えていくのを、黙って見つめていた。
「……なんで、」
お兄様が自室に入るその瞬間、僕の地獄耳が、涙声の問いかけを聞いた気がした。
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