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「さて。肝心の使い方が分からないわね」
早速、本の表紙を開いて虫メガネを当ててみたが、案の定そこに映るものはない。実はただの虫メガネではないのかとすら思えてくる。
何かスイッチのようなものでもあるかと、リジーは角度を変え虫メガネを丹念に調べてみた。
綺麗な虫メガネだ。ジャンク品と呼ぶには豪華すぎる。金で作られた外枠には植物模様の装飾がされている。柄の部分に使われているのはマラカイトだ。柄の先端に取り付けられた金属部分はラレイルが身に着けている白海のペンダントと同じ模様が彫られている。その中央に付けられているのはやはりペンダントと同じような青い石だ。小さいのに細部まで表現されていて、これを作ったラレイルがいかに器用であるかが分かった。
リジーにはもの作りの趣味はないが、これまでに多くのものを見てきた。それこそラレイルが作ったものも色々知っている。
今まで彼が作ったものは、大体このペンダントの模様部分に星力の仕掛けがされていた。だから何かスイッチがあるとすれば、この部分が怪しい。しかし青い石は指で押すには小さくて上手く押せなかった。
リジーは先端の細いものがないか探し、結局自分のピアスを外してそのポスト部分の先端を青い石に押し当てた。
カチッ
ビンゴだ。
小さな音がしたかと思うと、虫メガネのレンズ部分が光っている。その状態で、リジーは本にかざした。
レンズの光が筆跡のわずかな凹凸に反射し、返ってきた光がレンズ上に文字を浮かび上がらせる。
『愛するダーリン。ずっとオレだけの女性でいてくれる? ――ラル』
リジーは胸がぎゅっと掴まれるような思いだった。
彼がどんな気持ちでこの文章を書いて、そして消したのか。
ちゃんと、ラレイルはリジーのことを想ってくれていた。この一文に彼の想いが詰まっている。予定と随分違ったが、リジーは自分が知りたかったことを知ることができた。
「もちろんよ。……そんなの、とっくに」
リジーはペンを手に取るとサラサラと文字を書いた。そしてラレイルがそうしたであろうように、自分も書いた言葉を消した。
(いつか、私の返事を見つけてくれるかしら?)
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