◆現在 Side-Ral

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 ラレイルはその本を受け取ると、大事そうに表紙をなでた。 「おお~綺麗に直ってるじゃんかよー! サンキュー!」  そもそもが古い本ではあったが、一か月ほど前にラレイルが破って壊してしまったのだ。機械工作であれば自分で直すのはお手のものだが、本は本のプロに頼むのが一番だ。  結果、正解だった。ついでに細かい傷や、かすれて読めなくなっていた箇所も正確に復元されている。 「けっこう年季が入った本だね。繰り返し読まれている感じがしたよ」 「ああ。リジーの大切な本なんだよ」 「ビッリビリに破って怒られた?」 「まぁ…………私の悪あがきってやつ」  珍しく少し寂しそうな顔でラレイルはそう言った。 「なんのこと?」 「……とにかくありがとな。礼はするから何でも言ってくれ」  何でもと言われたら頼むことは一つしかない。ルーシーはへらへらしながらこう言った。 「んじゃあまた白海(はくみ)の可愛い子たち紹介して~」 「まずはその黒髪をなんとかしろよ。白海の女の子は白髪か、金髪好みだよ」  過去にもルーシーに自国の女の子を紹介したことがあったが、ルーシーの黒髪のインパクトが強すぎて上手く行った試しがない。 「ええー」  ぶーと口をとがらせているルーシーだが、可愛さは微塵もない。 「黒髪なんてこの世界じゃ超貴重よ? それを好きって言ってくれる女の子だっているっしょ~?」  はいはい、とラレイルは話半分に、早くも帰る素振りだ。本を大切そうにしまうと立ち上がった。
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