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白海の国の朝は早い。
リジーの日課は、城で最初の朝日が当たる東側のバルコニーでお茶を飲むことだった。
深い紫色の瞳に朝日が反射する。まぶしさに目を細めたが、この時間が何よりも好きだった。
久しぶりの静かな朝だ。
十日前、一人娘のトーランス(トア)が結婚した。国中がお祝いの雰囲気に包まれ、ここ首都ではこの十日間夜通しお祭り騒ぎだった。それもやっと落ち着き、リジーは静かな朝の空気を吸うと大きく背伸びした。
バルコニーの椅子に腰掛け一冊の本を取り出す。
年季の入った本だ。黒にも近い紫色の表紙は所々擦り切れている。
リジーは愛しそうにその本を見つめると、そっと口づけた。この本を読む時の習慣だ。そして中身をぱらぱらとめくって読み始めた。
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