24人が本棚に入れています
本棚に追加
リジーはお茶を一口飲むと、本の続きを読んだ。この本は作家マクラムの詩集である。愛を吟った詩が多く、リジーのお気に入りの一冊だ。
いつも一通り目を通すが、あるページでふと手をとめると、少し照れたような、困ったような顔で笑った。
「またその本を読んでいるの? あなたも好きね」
「そうね。ねぇ、サムも少し座らない?」
リジーがそう促すと、それじゃあ少しだけ、と言ってサムも椅子に腰かけた。
「それで? あなたが笑っているそのページには何が書いてあるのかしら?」
サムに聞かれ、リジーは恥ずかしそうに笑うと、書かれている内容を音読した。
「……あなたの姿見るたび、胸が苦しくなる。
優しくされるたび、胸が踊る。
少しのチャンスもないかしら?
そう期待してしまうほどに あなたのことが好きです」
詩というよりも……
「……ラブレター?」
「ふふ、やっぱり分かる?」
リジーは笑って続けた。
「私が書いたの」
「あなたが?」
「ほら、愛の詩集でしょ? だからここに昔……ロックレイのことを想って書いてみたのよ」
そう言って頬を赤らめるその姿は、この瞬間を切り取って絵画にできるほどの美しさだ。
「ロックレイ様?」
ロックレイとは、西の大国『幻悠』の王で、ラレイルと同じく現在の四天王の一人でもある。豪傑な夜の帝王。不死身の王とも呼ばれることがある。戦いに関しては右に出るものがいないほどの強さで有名だ。
リジーとはいわゆる幼馴染みで、ラレイルと雲雀を含めた四人で昔からよく一緒に過ごしていた。特にラレイルとロックレイは同い年で仲が良いため、ラレイルの婚約者として常に彼と一緒にいたリジーも、必然的にロックレイと過ごす時間が多かった。
ロックレイはとにかくかっこいいの一言に尽きる。若くして鍛え上げられた体、ハスキーな声、輝く黄金の髪は一本一本が綺麗で針のようにまっすぐでありながらもしなやかだ。そしてその男らしい顔立ちの中に時折見える甘い表情。幻悠の民特有の輝く翼も美しい。戦いの姿はまるで神のようだと、その姿を見たものは一目で心を奪われるという。
ラレイルと同じくらいどうしようもないほどに女好きなところが玉に瑕だが、それでも惹かれる女性は多い。リジーが恋に落ちたとしても不思議ではなかっただろう。
最初のコメントを投稿しよう!