あの日◆××年前 Side-Liz

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「エンゾ、ちょっといい?」 「リザエラ様。いかがなされましたか?」  ラレイルの側近でもあるエンゾなら、ラレイルが作ったものについて詳しいと思ったリジーは翌日彼に尋ねてみた。 「ラレイルが作ったもので、筆跡が分かるような虫メガネがなかった?」  虫メガネというキーワードに思い当たるものがあったエンゾは頷いた。 「……ああ、そういうのありましたね。消した跡が分かるヤツですよね」 「そうそう! どこにあるか知ってる?」 「そうですね……ラレイル様が作ったジャンク品は大体、北の倉庫にあると思いますよ」 「ありがとう! 探してみるわ」 ***  城には倉庫がいくつもある。宝物庫は煌びやかで、武器庫は整然とされている。しかしこの北の倉庫は違う。常に薄暗く、人の出入りも少ないため埃っぽい。中に保管されているものは『ジャンク品』とエンゾが表現した通り、本当にガラクタばかりだ。至る所に無造作に何かが詰め込まれている。  そのほとんどはラレイルや他の誰かが作ったものや、どこかで拾ってきたようなものだった。この中から目的のものを見つけるのは至難の業だろう。  しかしこんな時にも便利なものがある。星力(せいりょく)だ。元々の能力に差はあれど、術や力の適切な使い方さえ身に付ければ何だってできる。 a597f6c4-32a9-4243-bd06-5bd4b75360c1  リジーは探したいものをイメージしながら手を伸ばし、すっと払った。すぐにパチッと力があふれたかと思うと、ガタガタっと奥のものが震え、中から目的のものが現れた。ゆっくりと弧を描き、虫メガネはリジーの手元に収まった。  正直、使えるかも分からない道具を試すより、星力を使って消された文字を再現するほうが早いのだろうが、それには上手く応用できる術が思い付かなかったため仕方がない。  とにかく道具を見つけることができた。  見た目はまさに虫メガネだ。試しに手元にあったものを見てみると、普通に拡大して見ることができる。これで書いた跡をどうやって見ることができるか疑問に思ったリジーだったが、埃を払うと部屋へ持ち帰った。
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