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ラレイルとリジーは、いわゆる政略結婚だった。一国の王子と、国内有名企業の令嬢の結婚である。
リジー――リザエラ・ル・クラークは白海一の機械設備と流通ネットワークを持つクラーク家の長女として生まれた。
社長である父親のデュラン・ル・クラークはかつて、自らの国内における地位を確かなものにしようと、白海の王子と自分の娘と結婚させることを画策した。
当時の王はラレイルの祖父だった。彼はル・クラークの持つ巨大なネットワークを国の配下に置けることは大きなメリットと捉え、二つ返事で承諾し、いずれ生まれるであろう孫王子との縁談を承諾した。
その後ラレイルが生まれ、二人は婚約者となった。そこに幼い二人の意思などあったものではない。
しかしそれでも、二人は成長とともに愛を育んだ。
二人とも長子であり、基本的には面倒見のいいタイプである。お互いに思いやって成長していった。子どもの頃からラレイルはリジーにベタ惚れであり、リジーもラレイルの性格には呆れながらも、彼を大切にしていた。
お互いの家庭環境も似ていた。それぞれ弟妹がいるが、みんな母親違いである。子どもの頃からそういう自分たちの家庭環境に不満を抱き、自分たちの将来には違う家庭を築くとよく約束したものだ。
一方で、親や祖父が勝手に決めた婚姻であることに反抗心を抱き、敢えて別れの期間を置いてお互い自由に恋愛を楽しむ時期があったことも事実だ。その当時は勝手にそんなことをして周囲には大目玉を食らわせていたが。
そもそもラレイルは根っからの女好きであり、「リジーが一番」と言いながらも、幾度となく他の女の子にちょっかいを出しては彼女をやきもきさせてきた。しかしラレイルと別れている間はリジーもリジーで他の男性との恋愛を楽しんだ。
しかし結果として、二人は落ち着くところに落ち着いたのである。
結婚して二十一年。結婚後も決して順風満帆とは言えなかったかもしれない。それでも良くも悪くも似た者夫婦の二人だ。今の感じが合っているのだろう。
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