24人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういえば、そのラレイル様は、もう数日お見かけしていないけど?」
ラレイルはフットワークの軽い王だ。自らの任務もあるため、城を空けることも多い。
「いつものことでしょう」
リジーは話半分に返事をして本の続きを読んだ。
その態度にサムは、眉間に皺を寄せて説教モードに入った。
「リザエラ……そこがあなたの悪いところよ」
「何が?」
「あなたを見ていると時々思うの。本当にラレイル様のことを愛してる?」
それは愚問だ。リジーは即答した。
「もちろん愛しているわよ。当たり前でしょう?」
「……そうやって言葉にして伝えている?」
次の質問にはリジーは少し考えた。そもそもラレイルはそばにいないことも多い。だから日頃から愛を言葉で伝えているかと聞かれると、答えはノーだ。
それでも彼を愛しているし、愛されている自覚もあった。
「もっとラレイル様に甘えてみたらどう? 本当は寂しいんじゃなくって?」
「……寂しい? 私が?」
その感情は思いつかなかった。もう子供のころから四十年近く一緒にいる。
良い意味での空気のような存在とも言えるかもしれない。普段意識はしないけれど、なければ生きていけない。それでも確かにそこに存在している。だから姿が見えなくても寂しいと感じたことはなかった。
ぽかんとするリジーに対して、サムは立て続けに質問した。
「興味なさそうに見せているけど、心の底では、そばにいてもらいたいんじゃないの?」
そう言われてリジーは今度は静かに首を振った。
「あの人がそばにいる時、どんなに鬱陶しいかサムも知ってるでしょう? 普段いないくらいがちょうどいいのよ」
夫婦の距離感はつかず離れず。これがお互いにとって一番心地いいものだと思っていた。
最初のコメントを投稿しよう!