◆45日前 Side-Liz

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 バルコニーの外では、一人の人物が一部始終を聞いていた。空中で静止している。青いマントが静かに風に揺られる。  肩くらいまで伸ばした白髪は白海の民によく見られるウェーブをしており、羽織ったマントとの色の対比が美しい。 「……」  リジーたちが出ていった後、ふわっとバルコニーへ降り立ったのはラレイルだった。 b8b4430f-ba58-48b6-87bb-0ae638cb6760 「普段いないくらいがちょうどいい、か」  ラレイルが城に戻ってくるのは三日ぶりだった。本当はすぐにでもリジーに会いたかったが、会話を聞いてしまい出るに出られなくなったのだ。  先ほどまでリジーが座っていたテーブルには本が置いてある。ラレイルはパラパラとページをめくり、話に聞こえてきた文章を見つけると黙って読んだ。  リジーの文字だ。一文字ずつ、丁寧に書かれている。  リジーがロックレイに想いを寄せていたことは知っていた。確かに話に聞いたこともあったし、時折見せていたリジーのロックレイを見つめる目がそうだと語っていた。それに気づかないほど鈍感ではない。  でも、彼女が話していたように、おそらく二人には友人以上の関係はなかったのだろう。ロックレイがリジーの気持ちをどこまで知って、どこまで本気と捉えていたかも分からない。  それに、彼女はラレイルのことを愛していると言った。今のその気持ちが大事である。 「……オレも同じ気持ちだよ。でも……」  正直言って、自信をなくす。  若い頃にリジーが自分以外の誰と付き合っても気にしなかった。そこは自分に自信があったからだ。  しかしロックレイのことだけは別だった。  ロックレイは親友だ。気が合うし、四天王としても頼りにしている。自分から見てもかっこいい男だと思う。リジーと仲がいいのも、喜ばしいことだ。  しかしリジーが彼のことを恋愛感情を持って好きというのだけは気に入らなかった。単なる嫉妬だ。何かあったわけではないし、おそらく今後も何もないだろう。大人になった今では二人が会う機会も減っている。  でもこうして話を聞くと、その嫉妬心から、どうしても気になってしまうのだ。ラレイルは本に書かれたこの文章のことを知らなかった。お気に入りの本にこうやって文章をしたためるほどにロックレイのことが好きだったというのだろうか。  リジーは本当はラレイルの元を去ってロックレイのところへ行きたいのではないのだろうか。  そんなマイナスな思考が巡る。
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