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ラレイルはコンプレックスの強い男だった。
同じ四天王であり、幼馴染でもあるロックレイや雲雀と比べられることは昔から多かった。ロックレイほど男らしく強くもなければ、雲雀ほど綺麗な顔つきでも頭がいいわけでもない。手先は器用ではあるが、正直三人の中では目立つ方ではなかった。
そんな彼にとっての誇りがリジーの存在だった。美しく優しいリジー。ユーモアがあり、明るく誰にでもオープンなリジー。若い頃から『白海の女神』と謳われているが近寄りがたい雰囲気もなく、彼女は皆から好かれていた。
そんな女性が、自分の婚約者であり、そして妻になった。彼女の光に当たるだけの男であってはならない。彼女にとって恥ずかしい男にはなるまいと心に決めたものだ。しかしその反面、自信のなさから逃げに走ることが多かったのも事実だ。
いつもふざけて誤魔化して、心の片隅に抱える不安な気持ちをしまい込んできた。
自分が女好きであることも自覚している。そのせいで、リジーを大切にしていながらも彼女を傷つけたこともある。
何があっても自分にはリジーだけだと、思っているなら行動に移さなければならないことも分かってはいるが、行動はいつも空回りだ。
ラレイルは本の表紙を開いた。
表紙の内側に昔書かれた言葉の筆跡はもうほとんど残っていない。そこに何が書いてあったか、それを書いた本人にしか分からないだろう。
『愛するダーリン。ずっとオレだけの女性でいてくれる? ――ラル』
この本は、本当はラレイルからリジーへのプレゼントだった。
ラレイルは深くため息をついた。
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