24人が本棚に入れています
本棚に追加
リジーの誕生日当日。ラレイルは綺麗なリボンでラッピングした本を持ち、彼女の元へ向かった。
数年前からリジーも城で生活している。見つけるのは簡単だ。
彼女の生活は、午前中は城内で過ごし、午後はラレイルに付いて公務を行うか、何もない日は街や国外へ出掛けることが多い。
今は朝の十時。この時間なら彼女は中庭のテラスでお茶をしているはずだ。
中庭に出たラレイルは立ち止まった。彼女の姿を遠目に見ても分かる。息を飲む美しさだ。
籐で丁寧に編まれた椅子に深く腰掛け本を読んでいる。木陰にいるリジーだったが、陽の光が当たらなくても輝いて見えた。
(綺麗だ……)
ゆっくりリジーへ近づくと、ラレイルはいつもの調子で声を掛けた。リジーも気がついて顔を上げた。
「リジーちゃん♪」
「ラル。おはよう」
「うん、誕生日おめでと~♡」
続けてラレイルはリジーの頬にキスをした。
リジーもキスを返し、笑顔で答えた。
「ありがとう! 今年も素敵なプレゼントをくれるんでしょう?」
「もちろん♪」
ラレイルは本を取り出そうとしたが、リジーの次の言葉を聞いて思い止まった。
「ロックレイと一緒に選んでくれたって聞いたわ」
「……え?」
ラレイルの疑問の表情に、リジーも疑問で返す。
「あら、違うの? 何か素敵な本を贈ってくれるって」
「あ、ええと……それはそう、だけど…」
(……ロックと一緒に選んだだって?)
先日のロックレイとの強引なやりとりを思い出す。あの時ロックレイは本を二人からのプレゼントにしようと言っていた。それを何度か断った結果、彼も納得していたものだと思っていたが…
(ロック……一体どういうつもりだよ?)
「……ラレイル? どうかした?」
いつの間にか険しい表情をしていたようだ。目の前には、心配そうにこちらを見つめるリジーの顔があった。
「あ、いや……なんでもないよ。えっと……そう、プレゼントの本だよね」
「ふふ、今くれるの?」
一転して声のトーンが上がり、彼女の顔がほころぶ。それだけでリジーがどれだけ期待しているかが伝わってきた。
今の流れで本を渡して、それがラレイルとロックレイ二人からではなく、ラレイルからのプレゼントだと分かったら、リジーはどういう表情になるだろうか。
ラレイルはぐっとこらえて、小さく呟いた。
「……すぐ、持ってくるね」
最初のコメントを投稿しよう!