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名残惜しそうにリジーを解放すると、ラレイルは本を差し出した。
「ダーリン……これ、きっと喜んでくれると思う」
キスで少し頬を紅潮させたリジーは目を細めて微笑んだ。
「ありがとう、ラル」
本を受け取ったリジーは、しばらくそれを見つめた後、ラレイルを見た。何かを言おうと口を開けたが、小さくふっと息をつくと再び本に視線を落とした。そしてロックレイの方を向くと、同じような笑顔を向けてお礼を言った。
一方、本を渡したラレイルは俯いた。嬉しそうなリジーの顔を見たい反面、同じ笑顔がロックレイに向けられているところは見たくない。
(オレ、今めちゃくちゃ嫌な顔してるな……)
「……ラレイル?」
先ほどから彼の様子がおかしいのはリジーもすぐに気がついた。彼女はロックレイの顔を横目で見た。ロックレイは眉を上げ肩をすくめている。
リジーはそのまま、ラレイルが何か言ってくれるのを黙って待っていた。
彼女の視線を感じたラレイルは、小さく深呼吸をした。視線を伏せたまましゃべる。
「……リジーちゃん。また、夜に改めてお祝いさせて」
「え? ええ、いいけど……」
その返事にラレイルは大きく頷いた。
リジーの誕生日なのに、嫌な顔をしては彼女に悪い。次に顔を上げた時、できる限り普段の調子でにっと笑うと、ラレイルはそれ以上何も言わずにその場を去った。
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