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「よう、ルーシー。元気か~?」
薄暗い研究室に現れたのは、もうすぐ初老となる男だった。
青と白を基調とした衣装に宝飾類をじゃらじゃらとつけ、一見して派手な印象だが、位の高さも分かるような品の良さも兼ね備えている。
青白い顔に施した濃い化粧がまるで道化師のようだが、その胸元には男の国において王とその後継者だけが身に着けるペンダントが揺れていた。
「おー! ラレイルのおっちゃんじゃ~ん! 元気してた?」
ルーシーと呼ばれたその青年は長い黒髪を掻き上げると椅子から立ち上がり、訪ねてきた人物にハグをした。
目の下にはクマができ、無精ひげも生えている。もう何日もここに閉じこもっているのだろう。
「お前ねぇ、もうちょっと身なりを綺麗にしろよな~? 何日フロ入ってないんだ? 臭うよ?」
「あれ? ちょっと覚えてないや~ははは」
(集中すると周りが見えなくなるのは母親似だな~)
ラレイルはにやっと笑うと、近くの椅子に腰掛けた。
***
彼らがいるのは朱雀邸の地下に作られた研究室である。今では主に、この国の王、雲雀の次男であるルーシーが利用していた。
ルーシーは背が高い男だ。2メートルを越す長身に、顔や手などのパーツひとつひとつも大きい。ラレイルは小柄な方なので、並ぶとその大きさが一際目立つ。
へらへらと笑う姿は両親どちらにも似ておらず、美形が多い家系において残念だという心ない声も聞こえてきたが、頭の良さは近年における彼の一族の中でピカ一らしい。
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