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ラレイルが自分の国、白海に戻ったのは真夜中を過ぎた頃だった。
白海の国はこの世界の北東に位置する国である。国土面積はさほど大きくなく、周りを海に囲まれ、多くの川と湖が存在するが故に大きな街も多くない。
自然豊かな国と思われるが実際のところ白海は機械商業の国だ。もの作りの盛んな国で、数多くの技術師、機械師ら職人の伝統の業が古くから受け継がれ、そこに最新技術を開発し、取り入れて発展してきた。
首都・サンフィリスは国の南東に位置する港街で、アップダウンの激しいその街中に張り巡らされた小運河は全て機械式で流れを調整されている。
人々が寝静まった後も、静かに機械が動き続けている。
その街の上空を飛んで通り過ぎ、ラレイルは城へと向かった。
***
ラレイルはこの国の王として、父親である前王から地位を引き継いでもう二十年以上経つ。
白海の王であると同時にこの世界の四天王の一人でもあるためそれなりの力はあるが、『理想的な王』であるかどうかは疑問だ。
ラレイルという男を形容すれば、『不真面目・放浪癖・女好き』。
さらには神出鬼没な上に自身の影武者を作り出し行動するため、一般の国民はその人物が本物のラレイルかどうかも分からない。
18歳で成人してからすぐに即位したため、若さと普段のチャラチャラとした印象から彼のことをよく思わない者も当時は多かった。それでも政治手腕は確かなようで、加えて商才もあった。
白海の国が大きく成長したのはラレイルの代になってからだった。
地位もあり、力もある。そんな怖いもの知らずのラレイルだったが、生まれてこの方一つだけ、敵わないものがある。
妻のリジーである。
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