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ラレイルが城の寝室に入ると、広いベッドではそのリジーが眠っていた。ベッドに腰掛けると、妻の髪を優しくなでる。
今夜は分厚い雲がかかっており月の光は届かないが、それでも彼女の長いプラチナホワイトの髪はキラキラと輝いて見えた。
丁寧に手入れされた肌は四十代とは思えないほどきめ細やかだ。肌と同じくらい滑らかなシルクのナイトドレスはその豊かなボディラインに沿い、彼女の美しさを際立たせる。
若い頃からこの国で『白海の女神』と呼ばれてきたその姿はいくつになっても衰えない。
こうして、リジーが寝静まってから寝顔を見に帰る。これが最近のラレイルの行動だった。
「はあ~リジーちゃん……オレのダーリン……」
そっと彼女のおでこにキスをすると、ラレイルは部屋を出た。
***
執務室へ入ると、椅子に腰掛け深くため息をつく。机の明かりをつけ、持って帰った本を引き出しに片付けると、代わりに書類を取り出した。
「こっちを先に片付けないとな……」
最近抱えていた問題の報告書を読もうとパラパラとめくったが、正直あまり頭に入ってこない。気になるのは妻のことだけだった。
「……リジー、許してくれるかなぁ?」
本を片付けた引き出しに視線をやる。今回の件が片付いたらちゃんと謝ろうと心に決めていた。
先ほど見た彼女の寝顔を思い出し、悩ましそうにため息をついた。
かれこれ一か月以上、リジーとは口をきいていない。
それは全て、この本が原因だった。
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