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数日した木枯らしの強い日
…帰宅すると
また鍵は破壊されていた。
貴重品は持って出ていたから
溜息だけで入ったものの…
「え…」
絶句したのはマリンの姿…。
体毛をチグハグに切られ…
薄い皮膚からは少しだけだが
血が滲んでいた。
部屋を舞うマリンの白い毛…
奇声が響く母屋…。
ヒタヒタと迫る恐ろしさに
もう考える時間は不要だった。
カバンに身支度、
母親の位牌もしっかり入れて…
マリンをガーゼのケットに包んで
カゴに入れ………
扉も閉めずに庭を駆け抜けた!
「ぎゃははははは」
母娘の狂ったような笑い声。
強風に煽られる南天の葉が
私の背を押していた。
それが最後…
それ以降、私が生家に
戻ることはなかった。
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