わざと家出をした日

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後日、この日辿り着いた知らない家は幼稚園のクラスメイトの男子の家だったことがわかり、 あの日私が私の力で見つけた「新しい世界」は、今いる小さな世界と繋がってたんだな、と少し寂しく思った。小さな私が歩いていける場所なんて、大人から見たら本当に小さな範囲なんだなと改めて辛くなった。 あの日迷子になって泣きながら知らない人に助けを求めることになっていたとしても、この辺は幼稚園のクラスメイトが住むような範囲の場所だから、きっと同じ幼稚園に通うほかの子の家族が私のことを幼稚園や警察やママに電話で伝えることになってたんだろう。そしてその事は幼稚園のみんなに伝わってしまうんだろう。私はとても恥ずかしくなるだろう。遊びで家出したのではなかったのに。 大人は私や小さい子が怒ったり一生懸命説明したりしているとき、「かわいい」と言って笑うけど、それはとても屈辱的で、ものすごく恥ずかしい。子供の言うことをもっと真剣に聞けば良いのに。泣いてる子供の言うことがわからずに、「何で泣いてるの!」と勝手に怒り出すくせに。 もっと遠くへ行けるようになったら、今度こそ家出をしようかな、と考えてみたけれど、面倒くさいからやめようと思った。どうせ大人に見つかって、怒られて、笑われるんだと思ったから。 この日以来、私は家出をしたことがない。 どこにでも行ける大人になったし、 泣いている子供が何を言いたいのか、だいたい分からない。
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