わざと家出をした日

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わざと家出をした日

幼稚園の頃、 小さな家で母と2人で暮らしていた。 「しろいおうち」と呼んでいた。 おそらく木造の、小さな2階建てのアパート。 家に1人でいる時に、たびたび「ここ以外に逃げ場はない」と寝室の畳を見ながら思った。 逃げ場を探していた訳ではないけれど、この間まで暮らしていたおばあちゃんちは豪邸だったから、小さな1DKは、遊びたい盛りの幼稚園児にはとても小さく思えたのだ。 ママはいつも怒っている。仕事が大変そうなのはわかるし、この家に住むことを私がおばあちゃんに教えてしまったのが良くなかったことなのもわかる。 でも「内緒だよ」と言われた『秘密』は、「内緒だよ」と言えば誰にでも話していいモノだったから、1人で『秘密』を抱え続けるのはとても難しいことだったから、うっかりおばあちゃんにも『秘密』をわけてしまっただけなのだ。 悪気はなかった、共犯者を増やしたかっただけ。まさかおばあちゃんが敵側だとは、秘密を一番漏らしちゃいけない人だとは思わなかっただけ。
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