ビストロ・ノクターンのハロウィーン（1.5）

◇ハロウィーンは近い

　横浜にある、ちょっと古風でお洒落な建物の中にある洋食屋『ビストロ・ノクターン』。
　店長は吸血鬼、副店長は（元）ミイラ男。
　ホールスタッフは人造人間だし……ご近所さんには人狼のパン屋さんがある。
　僕は店長の吸血鬼――アインさんの甥っ子でありダンピールでもある、『きょっぴー』こと聖弘。
　というのは、些細な事で。
　僕も、皆も、いつものように美味しいランチとディナーをお客様に提供して日々忙しくも充実した毎日を送っている。

「もうすぐハロウィーンの季節だね」

　朝の支度を終えた後、入り口の掃除をしていた僕にアインさんがそう言ったので、思わず僕は振り返った。

「ハロウィーンですか？」

　勿論、僕だって名前くらいは聞いたことがある。幼稚園の頃なんかはお化けの仮装をして皆で幼稚園の中を練り歩いた、そんな記憶が薄っすらと残っている。
　……あとは毎年ニュースで派手に騒いでいる人たちを見る程度。
　当時僕の住んでいた場所は、さほど繁華街に近かったわけでもなく……外に出る事も、テレビを見る事も殆ど無かった僕は『噂に聞くハロウィーン』程度の間隔しかない。