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僕たち二人がかりで頑張っても全然削りきれない。三十分かけて一つ器が完成するかどうか……。
「器は合間の時間にまた揃えよう。ディナー専用だしね」
アインさんはそう言うと、鍋に切ったカボチャと、僕たちが削ったカボチャを入れる。バターを入れて柔らかくなるまで炒めたカボチャからはとても美味しそうな香りが漂ってきて、危うくお腹が鳴りそうになってしまった。
「もう、これだけで美味しそう」
思わずヴィクターが鍋をのぞき込んで言う。
「ははは、まだ全然完成していないよ。それより、手を止めると間に合わなくなってしまうよ」
そうだった。
ただでさえ僕たちはカボチャ買い占めの事件によって時間のロスが発生してるのだ。アインさんの鍋を眺めている場合では無かった。
慌てて僕たちは再びカボチャの削り出しに戻る。
やがてアインさんは、ペースト状になったカボチャに牛乳を入れると、僕を呼んだ。
「きょっぴー、頼みがあるんだけれど」
「はいっ、なんでしょう?」
アインさんは僕にへらと網を手渡す。
「これでポタージュを裏ごししてほしいんだ。丁寧にやった方が滑らかな舌触りになるからね」
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