3人が本棚に入れています
本棚に追加
親愛なる兄クラウド様
親愛なる兄クラウド様
兄さんがこの星から都会の星に出稼ぎに飛びたってから早いもので五年が経ちました。手紙なんて照れくさいから送ってくるなとあなたは言うでしょうね。サランパードの町は兄さんがいた時と変わらず涼しい風がオリンポスの山々から吹いて毎日楽しく過ごしています。今年は気候にも恵まれて豊作になってあとで兄さんが好きな野菜を送ります。都会の星は長年の環境汚染により植物が絶滅し外は放射能の雨が一年中振っているときいて田舎者の兄さんがやっていけるかどうか心配でしたが毎月こうして僕の口座に仕送りがあるからきっとうまくやっているのですね。
さて今僕は緑の丘の上にいてこの手紙を書いています。字が汚いのは許してくださいねこれはもう治りそうもないので、おっとそうだ。僕は無事にノース高等学校で2年生に進級し、来年は就活です。惑星間の交換留学生の候補にもなり、インターンにもいけそうです。これも兄さんの仕送りのおかげです。勉強しろと兄さんにどやされながら泣く泣くしていた時代が懐かしく思えます。今は春休みでこの手紙はその初日に書いたものです。たった一か月ですがつかの間の休息です。
でもなんといっても驚くことは連合星雲が中央銀河から九十光年離れた西の星を開拓したことです。昨日は学校の教室にあるラジオの前にみんなで集まってそのニュースを聴きました。夏だったら熱気で倒れていましたよ。この銀河の絶対的な力をもつ人工星ギガテスターと四つの星からなる連合星雲は僕たちのような小さな星に住む住人は脅威です。でもこんな田舎の辺境の星に何があるわけでもないですし僕は割と安心してますよ。あ、そういえばイスラム教官を覚えていますか、そうです。あの口うるさい頭の禿げた教官です。あの人はラジオから流れるニュースに人一倍過敏になっていました。「連合軍の偵察隊が来るかもしれない」とか「加盟を求められ拒否でもした日には攻め込まれ交渉の余地なく制圧される」とか一人で騒いでいました。笑っちゃいますよね。そんなことあるわけもないのに、しかし教官は宇宙歴8585年に起きた銀河大戦を経験してますからギガンテスターに逆らったレジスタンスの星々が片っ端から消滅し銀河の塵になったことは記憶に新しいのでしょう。あの一件から連合星雲に逆らう人はいなくなりましたから関わらない方がいいに決まってます。
兄さんは昔から頭もよく成績が優秀だったので心配はしてませんが裕福な家庭に育ち何非自由なく生きてきたエリートに負けないでどんどん出世してコテンパンにしてください。
もし留学生に選ばれたら将来は中央政府の官僚になって兄さんを迎えにいきます。
だから忙しくない時間が合ったら一言だけでもいいので返信をください。もうずっと返事がないので少し寂しいですよ。
あなたのよくできた弟レニーより
最初のコメントを投稿しよう!