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レニーとイイラが捕えた男は、宇宙をまたにかける密猟者で監獄の星(デッドプリズン)から銀河中に指名手配されていた賞金首だと分かった。近いうちに表彰式が行われるようだが、イイラは賞金さえもらえれば良く、レニーはそんなことにあまり興味がないのでおそらく猟銃会を代表して目立ちたがりの副会長が式典には顔を出すであろう。
しつこいくらいの事情聴取から解放された頃にはとっくにお昼の時間は過ぎていて市街地で遅めの昼食をとり三人はレニーの家に帰ってきた。
リビングの椅子に腰をかけるヨッチはレニーを見据えて口を開いた。
「あれほど密猟者を見つけたら深追いせず連絡しろと言ってあるはずじゃろ。ワシがたまたまイイラさんとお前の様子を見に行ってセラくんから事情を聞いたからなんとか間に合っていたものの、もしかしたら死んでいたかもしれんぞ、レニー」
「分かったよ、でも会長がいなくてもなんとかなったさ」
「またそんなことをお前は自分の力を過信しすぎるところがある。もっと己の無力さを心得てだな……」
「年寄りの説教なんて聞きたくないよ、それにおじさんに勝手に僕の家を教えたこと許さないからね!」
レニーが声を荒げると頭上にチョップが降ってきた。思ったより痛かったのでグッとにらんで後ろを振り返る。
「レニー失礼だよ、ヨッチさんはレニーのためを思って叱ってくれてるんだよ」
セラは丸鹿の子供をあれからずっと離さずに腕に抱いたままでいる。
「まぁいいわいい、ところでレニー。セラくんとはどういう関係なんじゃ? 外の宇宙船はセラくんのものじゃろ」
レニーは少し答えに悩んでセラの表情を窺う、頬に「内緒にして」とかいてあったのでレニーは適当な嘘を考えた。
「と、友達だよ。射撃コンテストの時に知り合ってわざわざ遊びに来てくれたんだ」
口から出まかせを言ったわりには辻褄があうし信ぴょう性も十分にある、レニーの言葉にヨッチもなにも違和感を覚えずに頷くと今度はとびきりの笑顔を見せた。
「そうかレニーにも素敵な友達が出来たのか」
ヨッチの言葉に安心してセラをもう一度窺うとセラも安心したように深い息を吐いていた。
「セラくんはこの星にどのくらい滞在を? 長期滞在なら許可書をもらわんと管理局がうるさいぞ」
レニーに目配せするが笑って誤魔化すしかできなかった。
「まぁいいわい、どうじゃレニーの友達なら猟銃会を集めて歓迎会を開くぞ」
「セラは実はお忍びで僕に会いに来てくれたんだ、だから会長、セラのことは内緒で」
間髪入れずにセラに向けられた歓迎にすかさずレニーが返す。そんなレニーの苦労を知らずセラは好奇心に身を任せヨッチに詰め寄る。
「ヨッチさん、しばらくレニーの家に住まわせてもらうんだけどこの子飼っていいかな?」
腕に抱える子丸鹿はこの家に来てからずっと眠そうに目をしょぼしょぼさせている。レニーは猟銃会の会長であるヨッチのことを尊敬もしていたが融通のきかない堅物じいさんと揶揄していた。まして野生の丸鹿をペットにするなんてことをヨッチが許すはずもないだろう。
「いいよ。かわいがってあげな」
えっ。
「そりゃないよ、しかもここ僕の家だし」
「よかった、もう名前も決めてあるの」
「なんて名をつけたんじゃ? 教えてくれんか」
セラは嬉しそうに高々と子丸鹿を持ち上げて言った。
「この子の名前はホーム。二人が帰るところって意味をこめて」
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