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親愛なる兄クラウド様  兄さんがこの星から都会の星に出稼ぎに飛びだってから早いもので三回目の収穫祭を迎えました。何もない真っ新な田舎町サランパートの人々もこの時期ばかりは、みな意気揚々に自前の猟銃を見せびらかしに広場へ集まるものです。酒場のおじちゃんも、近所の兄ちゃんもどこもかしこも獣臭くて、それだけで気が滅入ります。かくゆう僕も猟銃会の使い走りとして収穫祭の準備で山に偵察ばかり行っているから獣臭いのはお互い様ですが。  そういえば兄さんは山にばかり赴く僕をよく咎めていましたね、人一倍丸鹿肉が好きなくせに部屋が臭くなるからと、シャワーを二十分も浴びせられたことを忘れてはいませんよ。おかげで今部屋の中は、オリンポスの山々から吹く風が隙間から吹き込んで、鼻をつまんでも兄さんは耐えられないでしょうね。  でも兄さんが里帰りするというなら部屋を掃除して、においをとって、おいしい紅茶をいれて、丸鹿のソテーを用意しましょう。どうです、帰ってきたくなりましたか? 僕はいつでも待っています。  そうだ、兄さんに報告したいことがあります。実は今僕は宙から落ちてきた友達と子丸鹿のホームと一緒に暮らしているのです。名前はセラ。歳は僕と同じくらいで宇宙船の修理が終わるまでの間僕たちは一緒に暮らすことになりました。兄さんはここまで読んで驚いているはずです。野生の丸鹿が人間と一緒に生活しているなんて……と。僕も初めは驚きましたがセラは密猟者に親を殺され行き場のなくしたホームを育てると言ってきかないのですよ。でも野生の丸鹿が人間になつくなんて聞いたことがないのに、きっとセラには不思議な力があるのでしょうね。  そうだ、兄さん。収穫祭が落ち着いたら丸鹿の干し肉をお届けしますよ。都会の星では外出が出来ずに、人工肉ばかりを食べているでしょうから、きっと喜んでくれるとおもいます。  あなたのよくできた弟レニーより
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