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  「毎日やってよく飽きないね」  作業着から着替え終わりベランダから顔を覗かせたセラが、十五メートル先にある空き缶めがけて小型銃を構えるレニーに訊いた。 「日課だから、ただそれだけのことだよ」  レニーはそう答えながら、狙いを定め引き金をひいた。一秒にも満たない時間で銃弾が空き缶に命中し空中に舞い上がる。 「お見事!」 セラが控えめに手を一回叩く間にレニーは素早くリロードし、空中の空き缶に二発目を打ち込んだ。 「上手いね」  セラが感心したように言った。レニーは頷き、深く息をついた。昨夜丁寧に磨き上げた猟銃はこの星の人口恒星の光に照らされ銀色に光っている。 「そんなことないよ、ずっとやってれば誰だってできることさ」  レニーは卑下するように言った。 「それに僕は射撃なんて好きじゃないんだ、でも鍛錬を怠ると森で死んじゃうからね。生活のために仕方なくやっているだけ」 「どうしてそんな危険な仕事をしてるの? レニーって学生でしょ」  レニーはセラを見た。セラは褒められているのに歪な笑顔を向けるレニーに首を傾げた。 「都会の星にいた高祖父の代から膨れ上がった借金を返すためだよ」 「返せそうなの?」 「どうかな、このままじゃ僕の孫の代までかかるかも。まぁ僕は結婚しないから関係ないかもだけど」  自虐的に言ってみる。レニーは遠くの空を眺めた。 「五つ歳が離れた兄さんが出稼ぎに出て授業費の工面をしてくれるけど、正直それだけじゃとても暮らしてはいけないからこうやって生活費を稼いでる。じゃなかったらこんな危ない仕事やってないよ」 「でもそのおかげで射撃が上手くなったんでしょ」  セラは淡々とそう言った。決してお世辞ではない。ただ事実を確認するかのような口調だった。 「生きるためにね。一発でもミスすれば大けがするか死んじゃうから。だからそんな理由で上手くなったって嬉しくもないよ」  レニーは嘲笑った。二人のにおいを嗅ぎつけ隣接する倉庫からベランダへ駆けつけたホームは小さく「ヒン、ヒン」と鳴き、セラに抱えられる。どうやらその場所がお気に入りらしい。 「この子も言ってるよ。レニーは才能の塊だって」 「この星だけのね。僕はヒットマンじゃないから」 「でも、その小型銃はレニーが使い手で喜んでるよ」 「喜んでる? これは生き物じゃないからそんなこと感じないって」 「そうかもだけど、私にはわかるの」 「わかるって?」 「声が聴こえるの」 「声が?」  レニーは小型銃を人工恒星に照らして耳を澄ましてみる。まぁ案の情なにも感じないのだが。 「ねぇ、その子に名前はあるの?」  セラの視線が自分の右手に注がれ、レニーは小型銃をかざす。 「名前なんてないよ、こんなものに」 「じゃあ私が名前を付けてもいい?」 「別にいいけど……」 「じゃあね、その子の名前はモリビト、ピンチの時レニーを守ってくれるって」  レニーは薄ら笑いを浮かべながら、かぶりを振った。 「なんだっていいや、セラ朝ご飯にしようか」  鍛錬を終了し、家の中に入った。
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