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兵士がイスラム教官を撃ち殺した一瞬の隙をついてレニーは窓から飛び出した。それから全速力で走った。校舎から聞こえてくる発砲音がレニーの胸をしめ、それが原因で命を削りながら足を動かした。連合軍の男たちに足がつかないようにできるだけ遠回りをして家路につくと何も知らないセラは夕飯の支度を始めようと台所にいた。
「おかえりなさい。久しぶりの学校はどう……」
「セラ早くここから逃げるんだ」
まだ陽が浅いうちに帰宅したレニーを不思議そうに見ていたセラも奥の部屋から散弾銃。通称鷹の目を背に負い額に汗を浮かべるレニーの姿を見てようやくエプロンを外した。
「連合星雲のやつらがセラを探してる。あいつらきみを反逆者のシャイナリー家の公女って言ってた」
「私が公女?」
「そう、そう言ってた。捕まったら殺される。あいつら目的の為なら平気で罪のない人を殺すんだ」
レニーは浮き上がってくる胃液を右手で抑える。イスラム教官が射殺される映像がショート動画のようにリフレインした。
「レニー大丈夫?」
「僕は大丈夫、さぁはやく宇宙船に行こう」
レニーはセラの腕を掴んだ。
「待ってホームが見当たらないの、あの子きっと裏でひなたぼっこしてる」
レニーはセラの言葉を無視して腕を引っ張ると宇宙船に走った。宇宙船はほとんど整備が終わっていたが実際に離陸するかどうかは分からない。それでもここにいてはいずれ見つかってしまうだろう。部屋を飛び出し宇宙船まであと数メートルのところで発砲音が鳴り響いた。
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