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「すっかり暗くなっちゃったな、はぁやっぱりあのままバスに乗っておけばよかった」  ほとんど声にならない声でそうつぶやく。あれからレニーは郵便局を目指してひたすら歩いた。近道を知っていたとはいえ子供の足でかなりの時間がかかる。郵便局が閉まるぎりぎりに国際ポストに手紙を投函し、今も足をそそくさと動かしながら、レニーは西の空に沈む人口恒星を恨めしそうに睨んだ。大通りをさけ早く帰るために獣道を通っているからこれ以上暗くなれば凶暴な野犬に襲われる可能性がある。彼らは人間が移住するより前にこの星に住んでいた原生生物で猟銃会と森の覇権を幾度となく争ってきた。額に大きな角を持ち、胴長で足が六本もある珍妙な姿の獣ではあるが、知性があり、群れにはしっかりとした序列があった。森の周辺を常に3匹で行動をしているが、こちらが敵意を向けなければ基本的に襲われることはない。しかし今の時期は違った。後春の野犬は繁殖期のため単独でメスを求めてさまよい、お盛んで気が立っているため知性も獣に戻る。目の前で動くものに見栄えなく反応してしまうのだ。辺りを見渡しながら恐るおそる一歩踏み出していく。念のためバックから猟銃を取り出して、どこから飛び出してきてもいいように準備は万全だ。レニーは暗闇でも目が利くように「夜目」を会得しているが、運悪く大勢で襲われたら対処ができないことを知っていた。心臓の鼓動をばくばくならしながら足を動かして、三十分ほどたったときようやく生い茂る木々の間からうっすら見える赤色の屋根の先端を見つけた。 「早くシャワー浴びて寝よう」  緊張から解き放たれ胸を撫でおろす。家路までの道のりを進む足が一歩踏み出すたびに軽くなる。地面に向けていた目線を上げると不意に西の空に流れ星を見つけて立ち止まる。 「何か素敵なことがおきますように」  レニーの切実な願いは流れる星とともに宇宙のはるか彼方に消えて行く……はずだったが、流れ星は宇宙に消えることなく途中でさっきとは逆方向に動き出したと思えば複雑な弧を描き徐々にあふれ出す光を強く放っている。レニーは違和感に気が付き大股で家の方向に走った。皮肉にも謎の光は空で蛇行を繰り返してこちらに近づいてくる。
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