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「君はだれだ」
「セラ」
セラと答えた少女? いやどちらにしても言葉の頭に美がつくのは間違えないだろう。
「あなたは?」
「セラ」と名乗る人物の素早い切り替えしにレニーは対応できず数秒間自分の名前を忘れていた。黙って立ち尽くすレニーに気を悪くしたのかセラは不機嫌そうに言った。
「あなたは人に名前を聞いておいてだんまりするの? それって失礼じゃない?」
我に返ったレニーは落ち着きを取り戻した。そして確かに自分がしたことは相手に対して失礼だと咄嗟に思い立ち慌てて口を開く。
「ぼ、ぼくはレニー。ノース中学校新三年生でえっとこの玉子焼き美味しいね」
「そうありがとう」
そう言って背を向けるセラは再び食器を洗い始める。
「いつまでもそこに立ってないで座ったら、せっかく作ったのに冷めてしまうよ」
自分でも不思議なくらい従順に椅子に腰をかけるとレニーも再び食事にはしをつけた。無言ではしを進めていると洗い物を終えたセラが正面の椅子に腰かけ頬杖を突きながら笑みを浮かべる。
「ねぇ、その料理に毒が入ってる可能性を考えないの?」
むせて咳き込むレニーは瞬時に水で流し込んだ。
「宙からふってきた不審者が作ったものだよ、警戒するのはとうぜんじゃない?」
「毒殺しようとするならエプロンなんかしないよ。それにすごくおいしいからこれが人生最後の食事でも別に構わないし」
「あなたって変わってるね」
「よく言われるよ」
宇宙から来た謎の訪問者とテーブル越しに相まみえるこのエキゾチックな空間にいつまで耐えられるのかレニーは心配していた。まぁ実際宇宙からの訪問者は他の星では珍しくもない。つい最近もいろんな星を渡り歩き物語を書いている青年に会ったことがあるし、その青年の話しでは自分探しの旅にでる若者が他の星に赴きそのまま永住するパターンも少なくないと聞いたことがレニーにはあったのだ。
「ごちそうさまでした」
レニーは深々と頭を下げた。セラは綺麗になったお皿を見て不敵に笑い、レニーの目を見つめたまま上体を前かがみにして詰め寄る。
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