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「食べたね。全部食べてしまったんだねレニー」
ドキッとした。心臓を鷲掴みにされた感覚に陥る。
「なになに? 何がしたいの」
「実は私はね、どうしてこの星に来たのか分からないんだ。それに記憶も曖昧で……だから思い出すまでここにおいてよ。もちろんご飯は朝昼晩作るし最低限の身の回りの世話もしてあげるよ悪い話じゃないでしょ」
セラの要求にレニーは言葉を選んで発言する。
「た、確かに僕にとって悪い話じゃないけど、僕はセラのこと何も知らないし、それに長居するなら管理局に連絡して居住認定書をもらわないと、あとセラは女の子? でしょ、僕は男だけどそういうこと気にしないの?」
短い時間で頭をフル回転して答える。意にそぐわなかったのかそれとも予想外の答えに戸惑ったのかセラは眉間にしわを寄せて数秒黙り今度はにこりと笑った。その笑顔がなんだが悲しげでそれでいて美しかったからかレニーは視線を外す。
「なんで? 全然気にならないよ」
「そ、そうなんだ」
「でも管理局とかよくわかんないから怖い、だから匿って」
「えっ、でも」
「朝ごはん食べたよね」
「あぁはい」
レニーは頷くしかなかった。本当は頷かされたと言ってもいい。セラの言葉にはそういった迫力がありレニーもそれ以上に問うのは野暮だと思ったのだ。
「あの」
「なにレニー?」
「そ、その両腕のブレスレットかっこいいね」
しかしこのまま会話を終わらせるのもなんとなく後味が悪い気がして最後に一つだけ先ほどから気になっていたことを質問する。するとあぁと両腕に装飾されたブレスレットを眺めた。見たこともない金属が大きな宝石をつないでいて左右で色が違っていた。右腕は赤く左腕は青かい宝石でどちらも陽の光に照らされて輝いていた。
「本当だ」
「本当だってセラのじゃないの?」
「たぶんずっと私のだと思う。腕によく馴染むもん。きっと大切なものだと思うけど。おもいだせない」
よほど高価なものだと思っていたがセラはあまりにも無関心でさほど興味もなかったため会話はここで止まってしまった。レニーは自分の食べ終わった食器を台所に運ぶと気を取り直してセラにこの星の大まかな説明とこの星での自分の生活のことを少しだけ話した。
「その丸鹿っていう生き物を見てみたいなぁ」
レニーの話しに興味を示したセラは特に丸鹿の話しに食いついた。そんなに興味があるなら今から見に行こうと冗談っぽく言ってみるとセラは嬉しそうに玄関を飛び出した。
「こんな朝早くから丸鹿は活動しないよやつらは寝坊助なんだ」
「そうなんだ。でも今見たいんだ付き合ってよレニー」
セラの強引な要望にレニーは渋々頷いた。朝とはいえ森の中に入るのは丸腰では危険すぎるため一応小型の猟銃を忍ばせて鷹の目を背に負った。
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